装者達のバレンタインデー(2021)
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ないのだと再確認しつつ、深呼吸で再起動を図った。
このままでは心臓が持たない。慌てて話題を逸らそうと、セレナはマリアのチョコに目をつけた。
「そっ、そういえばわたし、姉さんのチョコはまだ食べていませんでした」
「そっ、そういえばそうね!……しまった、セレナの分を用意するの、忘れてたわ……」
「ええッ!?……あ、でも仕方ないですね……。わたしも、姉さんの分を用意するの忘れてしまってましたし……」
2人とも、ツェルトに渡す事を第一に考えていた結果、うっかり互いに渡す分を忘れるほど没頭してしまっていたのだ。
うっかりとはいえ忘れた事に、思わず肩を落とす姉妹。
だが、それを聞いたツェルトは思い付いたようにこう言った。
「食べたいのか?なら……ほら、あーん」
「え……ッ?ツェルト義兄さん?」
「こんなに沢山あるんだから、3人で分け合えば足りるだろ?」
「ツェルト……」
思わぬ提案に、姉妹は目を輝かせる。
ツェルトが差し出すルビーチョコに、セレナはパクリと齧り付いた。
「ん〜♪さっすが姉さんですッ!とっても美味しいですよッ!」
「そ、そう?セレナにも喜んでもらえるなら、張り切った甲斐があるわね」
そう言って、セレナのチョコに手を伸ばそうとして……ふと、マリアは気づいた。
反応が遅れてしまったが、あまりにも自然すぎたのだ。
今、ツェルトはセレナにチョコをあーんしている状態であるという事に……。
「ツェルト義兄さん……もう一個、いいですか?」
「いいぞ。ほら、あーん」
「ちょっ、ちょっとッ!?」
思わず裏返る声。振り向くツェルトとセレナ。
そこでマリアはハッとなる。
思考が追いつくより先に、声が出てしまっていたことに。
そして自分は今、妹を羨ましいと思っていた事に。
ここでマリアに与えられた選択肢は2つだ。
素直に自分にもして欲しい、と頼むか。
姉の威厳を保つ為に何でもない、と断るか。
どちらか迷っている間にも、3人の間の沈黙は1秒ずつ進んでいく。
そして脳内で自分の気持ちと協議した末に、マリアが出した結論は……。
「わ……私にも……その……あーん、してよ……」
頬を赤らめながら、少しツンデレ気味に。
そんな顔を見せられて、断る男が世界のどこに居よう?
ツェルトの返事は無論、決まっていた。
「マリィ、あーん」
「あ、あ〜……ん」
今日はバレンタインデー。大好きな人に気持ちを伝える日。
であるならば、威厳だの体裁だのと言った意地は無用の長物。誰もが素直に甘えていい日なのだ。
その後、チョコを食べさせ合いながら、3人はバレンタインデーの夜を過ごしたのだという。
「口で食べさせるの……ダメか
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