第百二十四話 肥後の戦その七
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「いなかった」
「どうも敵もです」
「その余裕がなかったのですな」
「このことは」
「目の前に集めるだけでな」
兵達をというのだ。
「それでじゃ」
「それで、ですな」
「正面からの戦を挑む」
「そうしてきましたな」
「そうじゃ、だからな」
義久はさらに言った。
「我等はな」
「このままですな」
「前に進み」
「そうしてですな」
「攻める、島津家の攻め方でな」
それでというのだ。
「戦うぞ、右は又三郎でじゃ」
「それがしですな」
義弘はすぐに応えた。
「そちらは」
「うむ、そして左は又六郎じゃ」
今度は歳久だった。
「お主が受け持つのじゃ」
「この度はですな」
「陣を率いて戦てもらう、そして真ん中の第一陣はな」
そちらはというと。
「又七郎じゃ」
「先陣としてですか」
家久も応えた。
「戦えと」
「そうじゃ、そしてわしはな」
義久は自分のことも話した。
「その後ろで本陣を率い」
「そうしてですな」
「そのうえで、ですな」
「戦われますな」
「その様にする」
こう弟達に答えた。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「その様にしてです」
「戦いましょうぞ」
「その様にしてな」
こう言ってだった、義久は全軍を率いてだった。
そうして戦をはじめた、島津家の軍勢は義久の言う通りに動いて甲斐家の軍勢達との戦に入った、すると。
島津家は駆けつつ鉄砲を放ってだった。
そうして切り込んで戦った、そうすると。
阿蘇家そして相良家の軍勢が崩れてだった、残るは甲斐家はというと。
しぶとく戦い続けた、義久はその彼等を見て言った。
「強いな」
「はい、甲斐家の軍勢は」
「まさに鬼です」
「恐ろしい強さです」
「そういえばじゃ」
義久はここでこう言った。
「甲斐殿は肥後の国人でも豪勇で知られた御仁」
「ご自身の武芸もさることながら」
「采配もですな」
「そして何かあればご子息でも手にかける」
「そうしてもおかしくないまでに非情だとか」
「そんな御仁だとな」
それこそというのだ。
「戦うとなると」
「これだけの強さですか」
「何倍もの薩摩隼人にも臆することなく戦う」
「そして一歩も退かぬ」
「そうした方ですな」
「そうであるな、それだけの御仁なら」
それならとだ、義久はさらに言った。
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