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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode13『せかい』
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物、と呼んで間違いない容貌であった。

『か、ヒュ。カぁ、あ、ひュ』

 呼吸はあまりにも不自然で、とても満足に酸素を取り込めているとは思えない。僅かに見える逢魔シン自身の肉体は、熱された魔鉄によって火傷の跡がいくつも浮かび上がっていた。

「し、ン……?」

「……ともよ?」

 ヒナミの後ろに倒れていた智代が、そんな声を漏らした。

「シ、ン……だめ、だ。それ以上、そっちに、いく、な!」

「ともよ、動いちゃだめ、怪我が……!」

「おまえ、は、化け物なんかじゃ、ない……おまえは、人間なん、だ……!」

 ヒナミの静止など耳にも届いていないように、智代は焼き切られた足を引きずって床を這う。それを止めようとヒナミが間に割って入ろうとも、彼女は凄まじい力でヒナミを押しのけ進もうとする。
 およそ歩くこともままならない怪我人の力ではない。彼女はきつく噛んだ唇から血を流しながら、決死の形相で瓦礫と化した床を掴んだ。

『――ァ、あ、あァッ!!』

「――。」

 やはり、スルトルにダメージはない。どれほど常人なら死を免れないダメージを受けようが、それが同じ製鉄師によるものでない限りは彼らに友好打を与えることは不可能なのだ。

『……かぞ、クを、マモるん、だ』

 彼の身に起こっているであろうあらゆる苦痛を無視して、吠える。
 それは逢魔シンという罪に溺れた青年がその身に刻んだ贖罪、それ以外に償い方を知らなかった無知な少年が出来る、ほんの僅かな罪滅ぼし。

『みんナを、まモる、んだ』

 そして或いは、彼自身の願い。何もかも全てを悔恨と苦痛の海に沈めてしまった彼の持った、数少ない“望み”と呼べるもの。
 自ら望みを持つことを悪と断じた馬鹿で思い込みの強い子供が、その心の僅かな隙間に抱え込んだ、唯一とも呼べる願い。

『ひな、みを、まもる、ん、だ――!』

 そして。
 世界に怯える新たな家族と、必ず果たすと誓った小さな約束。

 ごちゃまぜになった彼の全てが、今ああして怪物の姿を突き動かしている。あの化け物の根底に眠る、彼の自意識の中の自称“存在意義”が、彼自身の全てを代償に走り続けている。
 ぼろぼろになって、傷だらけになって、歪み切った彼の中の世界の示すままに、その身をズタズタに引き裂きながら、見えもしない本物の世界と戦い続けている。

 ――不意、に。

『――――――――――――――ぁ。』

「――――――――――――――ぁ。」

 逢魔シンが、僅かに、声を漏らす。
 宮真ヒナミが、僅かに、声を漏らす。

 瞠目、光、炎。
 煉獄。
 血。


 鬼。

 瞬きの間に、世界が交錯する。二つの世界が、唐突に、精彩に。
 その時になって、
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