episode12『銀色の鬼』
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幸中の幸いか。
「あぁ、不愉快だ。製鉄師でもない女が、一丁前に俺の邪魔をしやがる」
ごぽ、と音を立てて、少し離れた辺りの床が溶解する。どろどろに溶けた床板の中から現れたスルトルの身には当然超高温の溶解した魔鉄建材が纏わりついているというのに、彼は一切気にした様子はない。
地下を溶かし進んでいたのだ。先程地面が陥没したのは、智代の真下をまるごと溶解させたからだろう。
そもそも、戦いの常識が違うのだ。伊達に戦争の形を変えた戦略兵器と呼ばれてはいない、彼らは生きたミサイルだとか戦車だとか、それ以上の次元なのだ。
「別に今殺してやってもよかったがな。流石に目の前で殺しまでやっちまうとよ、俺の花嫁の契約にも関わってくる訳よ。あ?分かるか?俺はよ、この契約にこの先の命運全部が掛かってんだ。なぁ、おい。分かるか?」
「やめて……!やめて!分かった、言うこと聞くから!契約でも何でもするから、ともよに酷いことしないで……!」
「あぁ?酷いこと先にしたのはそっちだろうが、なぁ、おい。俺たちの感動の再会に水を差しやがった、運命の日だ、こいつを汚しやがったんだぜ。なぁ、オイ」
自分が初めにヒナミを拉致しようとしているというその事実を棚に上げて、男は悪びれもせずそんな事をのたまう。だがそれに関して指摘をすれば、今度こそ智代の命が危ないことをヒナミも悟っていた。
――だが。
「……ッは、笑えるな」
「――あァ?」
智代が、嘲るように口にした。
「破綻者が随分と図に乗って吠えるな。こんな子供に縋って、随分と必死らしい」
「なんだ?あぁ?お前、自殺願望でもあんのか?なぁ、おい」
「まって、ともよ、だめ、やめて」
何故、わざわざ自ら死にに行くようなことを。
彼を煽れば煽るだけ、智代に危険は及びやすくなる。スルトルに殺人に対する躊躇はない、既に片足を失っているのだ、これ以上は本当に死んでしまう。
スルトルが、智代を庇うヒナミの前にまで歩み寄る。彼はヒナミを無視して智代の胸倉を掴み上げると、その手とは反対の手に業火を宿す。それは少しづつ火力を高めていって、やがて眩いばかりの閃光を放つ光の刃に昇華する。
熱線だ。触れるもの何もかもを焼き切る、超高温の熱線が生まれる。
「やだ、ころさないで、おねがい」
「か、ぁ」
じゅ、と、あまりの高熱で、智代の頬が僅かに灼けた。
智代が殺される。殺されてしまう。智代が居なくなったら、本当に家族たちに合わせる顔がない。彼女を失った皆が、どれほど悲しむか想像もつかない。
それに、まだ、ちゃんと仲直りだって出来てない。しっかりと話し合いも出来ずじまいだったのに、このままお別れだなんて絶対に嫌だ。
――ちょっと一
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