episode12『銀色の鬼』
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「っチ!」
散弾の衝撃で吹き飛ばされた男に続いて、女の方にももう片方の拳銃を撃ち放つ。バチリ、というスパーク音と共に女の姿がブレて、燃える長椅子群を突き破って遙か後方にまで吹き飛んだ。
怪我も負わなければ、貫通することもない。それはつまり、弾丸の持つ運動エネルギーがそのまま体に伝わるという事にもなる。とても、人間の膂力で耐えきれるものではないだろう。
一度双方との距離を開けた智代は、一息にバックステップでヒナミの前に陣取った。
「ま、マナは……!」
「彼女はもう他の子供たちに預けて避難させた、今頃表の野次馬共に紛れてる筈だ。しかし――」
安心させるようにヒナミの頭を撫でた智代は、両手の銃を構え直す。かしゅ、という音と共に排出されたマガジンはそのまま捨てて、ケープ裏から抜き出した弾入りのマガジンを再装填。
あまりにも手慣れた、流れるような動きだった。
「とも、よ?」
「話は後だ。あの一瞬で護衛からの連絡が途絶えたとなると、相手は本物の怪物とみていい――さっきのも、時間稼ぎにしかならんだろう」
見ろ、と智代が前方を指差せば、当たり前のように先の二人がその場から起き上がろうとしている。製鉄師には銃なんて聞かないという話は以前から知ってはいたが、いざこうして目の当たりにすると、その不死身性に空恐ろしいものを感じる。
――二人?
スルトルはどうしたのだ。まさか、さっきのでノビてしまったなんて事は流石にない筈だ。だが現に起き上がってきたのはあのコンビだけで、佇む魔女を残したままスルトルは未だ土埃の中から起き上がってくる気配がない。
ふいに、ガクン、と。視点が下がった。
「――な」
「ともよ!!」
あり得ない、と。そう思った。
ヒナミと智代が居た周囲の地面が僅かに陥没すると同時に、炎に包まれた腕が地面から伸びる。あまりにも現実離れした光景だ。
炎の腕はそのまま智代の足首を掴むと、輝きを放つ。ジュ、というわずかな音に続いて、智代が大きくバランスを崩した。
「っが――!?」
「ともよ、ともよ!」
その場に倒れこむ彼女のそばに駆け寄って、掴まれていた足首を診る。長い裾を捲ってみれば、しゅう、という僅かな音と共に真っ黒な肌が現れた。
いや、真っ黒な肌、で済むならばまだ良かった。
「あ、あし……!足……っ!」
「……が、ぐ……っ!」
革製のブーツは途中から焼き切れていた。そして、その先にある筈のものはない。プスプスと音を立てて黒い煙が僅かに上がる。
智代の右足首から先が、焼き切られていたのだ。
右足を抑えて、智代が脂汗を流しながら呻く。切断面は真っ黒に焦げ付いて、出血は起きていなかったのが不
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