episode11『覚悟』
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にこうしてのうのうと孤児院に逃げ込んで暮らしている。それ自体が、いわばこの孤児院の“きょうだい”達への裏切りのようなものなのだ。
「……目、的は、わかってる。私がついていけば、それで、いいんでしょ」
「おや、意外と素直だね。以前は随分と抵抗して逃げたと聞くが」
「逃げたらマナにひどいことするって、言うんでしょ。なら、いうことは聞く、から。マナを、離して」
途切れ途切れながらも、そう言い切るヒナミに女は「ほお」と感心したように笑う。彼女が男のほうに「離してやりな」と告げれば、男はあまりにもすんありとマナを解き放った。
あまりにもすんなりと言うことを聞くもので、逆にヒナミが警戒して二人をにらみつけた。
「足の震え、涙目、空元気、どれも誤魔化せちゃいないが、15にもならない子供がそれを言い切る度胸は大したもんだ。なに、私らも依頼さえこなせりゃ、無理に怪我人を増やすつもりもないのさ」
パッと両手を掲げて余計なことをするつもりはない、とジェスチャーをする女に対して、しかし当然警戒を緩めることが出来る訳もない。彼女ら彼らは紛れもなく敵、こちらに害意を持って近づいてきているのは変わりないのだ。
身を包む恐怖を太腿をつねって誤魔化し、形だけでも目の前の二人をにらみつける。自分の心を鼓舞するために、そうポーズをとるくらいしかできることがなかったとも言えるが。
「依頼主は一階でお待ちだ、聖堂があるんだってね。そこに向かったそうだよ」
「聖、堂」
確かその辺り、正面玄関付近は常駐の製鉄師達が守っていた筈だ。ということは、さっきの衝撃音と振動はその交戦によるものか。
まだ、彼らがその依頼主とやらを抑えていてくれればそれが最善だ。ヒナミを狙う集団は一つではない、相手によっては十分に対処してくれている可能性だってある。
もはや、命運の賽は投げられた。
「み、な……?」
男に離され、床に付していたマナが、部屋から出ようとする二人に続くヒナミの背に言の葉を投げかける。
「……ごめんねマナ。迷惑、かけちゃって」
己のせいで傷付けてしまった大切な友達に、謝罪する。彼女には怖い思いをさせてしまった事だろう、その気持ちはヒナミ自身痛いほどわかるし、きっと心の傷はずっと後に残る。
――そうだ。
「シンが、帰ってきたら――。」
彼には、なんと言うべきだろうか。きっと彼の事だから、自分のことを責めてしまうかもしれない。最初にこんな厄介ごとを持ち込んだのはヒナミだというのに、律儀にも気にしてしまうのは目に見えている。
こちらが気にしないでとか、貴方は悪くないよなんて言っても、きっと素直に受け止めないだろうな、なんて思って。
あ。
と、なんとなく、きっと彼
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