episode11『覚悟』
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タイミングで重機で教会を取り壊す事が既に意味不明。
ならば、残された可能性は一つ。
「製鉄師……っ!」
「良く分かってるじゃないか」
「――っ!」
マナの腰掛けた出窓はいつの間にか開け放たれていて、困惑する彼女の背後には大きな影。彼女がそれに気付くよりも早く伸びた丸太のように太い腕が、マナの頭を鷲掴みにした。
「ひ、あっ!?」
「マナっ!!」
「少し落ち着きなよ、何もしないさ。アンタが大人しくこっちの指示に従うんなら、っていう条件は付くが」
よく見れば、相手は一人ではない。相当な大柄な男の奥に、空中にまるで足場でもあるかのように立つ小さな影。先ほどから語り掛けてきているのはどうやらそちらの方らしい。大柄な男の方は、頑なに口を閉ざしたままだった。
見覚えのない相手だ。かつて見た『あの男』とは別の製鉄師、しかしやはりその顔立ちは日本人のソレとは違う。間違いなく海外からの刺客――ヒナミの身柄を狙う、異邦の誘拐犯。
「……あな、たは」
「別に名乗ってやる義理もない。あたしらはただの雇われ人、あんたを依頼人のところに連れていけりゃあそれでいい」
大柄な男の背後に控える、ダークブロンドの髪の女。一目見た程度の齢は15を超えるか超えないかといった印象だが、月明かりを反射して薄く銀色に輝いて見える髪は、魔女特有のそれ。
彼女が喋ることそのものは言語の差異で分からないが、彼女の付けた魔鉄翻訳機が自動的にその意図を日本語へと変換して伝えてくる。
「だ、れ?何なの……?痛、い」
「……大人しくしていることだ、怪我をしたくはないだろう」
マナの頭蓋を鷲掴みにして小さくつぶやく男は、まず間違いなく製鉄師だ。そもそもとしてここは二階、まさか梯子を立てて登ってきた訳でもないだろう。
完全に油断していた、まさか今になってバレるだなんて思ってもみなかったのだ。あんまりにも居心地がよくって、自分の立場の認識が甘くなっていた。恐れていた最悪の出来事、およそ考えうる中で考えたくもなかった状況――そして同時に、大いにあり得てしまう最大の可能性。
宮真ヒナミという一個人が抱える危険に周囲を巻き込んでしまうという可能性が、起きてしまったのだ。
「さて、宮真ヒナミ。あんた自身がこの状況についてはよく分かってることだろ」
「みやま、ひ、なみ?誰と、勘違いして、るの?」
「……?おや、知らなかったのかい。そこの女の子の本当の名前さ」
ぎ、と歯を食いしばる。
有馬ミナと、宮真ヒナミ。この孤児院で使っていた偽物の名前と、本当の名前。紛れもなく大切な友達である少女に、嘘をつき続けてきた心の隅がチクリと痛む。
そうでなくとも、事情も話さず
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