episode11『覚悟』
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うシンの姿は記憶に新しい。あれはやせ我慢とかそういう次元ではない、汗一つ掻くことなく、何ならヒナミが指摘するまでシンは怪我に気付いてさえいなかった。
痛覚の断絶、即ち触覚の不全。人間としての致命的な欠陥だ。
「シン兄のあれを何とかしようと思ったら、シン兄が製鉄師になるしかない。OWを封じ込めて、実害がないように仕舞い込むしかないの。でも……ただの魔女じゃ、シン兄と契約が出来ないから」
「……やっぱり、失敗したことがあるの?」
ヒナミが一度シンに契約を持ち掛けた際、シンは契約を断固として拒否した。あれほどのOWを持っているなら、何もなければあそこまで契約を強く拒むことなど無いだろう。だが。
「……あれ?でも、失敗したって別に何か不便があるなんて、聞いた事も無いけど」
製鉄師と魔女との契約は、勿論失敗する事がある。というか、全体の割合をみれば失敗する事の方が多いとも言えるだろう。その場合の原因としては、製鉄師側のイメージ力の不足だったり、そもそも製鉄師と魔女のイメージの相性が悪かったり、魔女側が製鉄師のイメージを受け止めきれなかったりと、その要因は様々だ。
製鉄師のイメージが足りないのであれば、イメージ力を鍛える訓練をすれば解決する場合がある。製鉄師と魔女の相性が悪いのであれば、他に相性のいい相方を探したり、親密になる事で互いを受け止めやすくするという解決手段も存在する。
だが、シンのように製鉄師のイメージが莫大で魔女がそれを受け止めきれないという場合は話が別だ。受け止めきれないほどの莫大なイメージがあるということは、その時点でそのイメージを受け止められる魔女は限られる。
且つ、その中から相性のいい魔女を探し、且つ『一度魔女側の不足で失敗している』というプレッシャーを跳ね除け、イメージを受け止める事に集中しなければならない、という場合もある。
だがその高いハードルに対して救いと言えるのか、契約を失敗しようとも何かペナルティが発生する、という話は過去から現在に至るまで一度も確認されていない。
「……うん。一回だけね、シン兄が契約しようとしたことがあったの。シスターが魔女の子を連れてきて、儀式もしてた。私、気になってこっそり覗いてたんだけど……」
少し言い淀むように俯いたマナは、「あんまり、話すのも良くないとは思うんだけどね」と前置きした上で、ゆっくりと語り始める。かつてシンと契約を試みた魔女の少女の、その顛末を。
「なんでそうなったのかは分からないし、大人の人たちも分かってないみたいだったけど、その魔女の子は大怪我したの。全身血だらけになってて、ずっと泣きながら叫んでた。その後すぐに病院に運ばれたみたいだけど、どうなったのかは、私も知らない」
「……え」
契約の
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