衝動
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、僕も君のことをずっと考えてきた。勝つための方法を…」
リメインライトの炎に包まれながら、ただ力無く倒れていくシオンを背に語るシュタイナー。
その表情は濡れた髪に隠れて見えないものの、握られた拳は確かに震えていた。
時に殺し合い、
時に卓を囲み、
時に手を取り、背中を預けてきた。
側から見れば歪とも言えるその関係性。
初めは嫌悪したソレもいつしか日常となり、徐々に心地良くなってしまっていた。
そう、自分の罪を忘れてしまうほどに…
「でもダメなんだよ、このままじゃ僕は君たちに依存し続けてしまう…」
言葉を募るほど自分が弱くなるような気がした。
「怖いんだ。この罪を忘れることで自分が自分でなくなってしまうのが…!」
震える声で絞り出した一言、それは紛れもなくシュタイナー自身の本音だった。
「…まだ」
「ッ!」
途切れ掛けの意識の最中で発したシオンの言葉にシュタイナーは身体を震わせた。
「まだ…終わって、ねぇ…」
「どうして…」
「直前でなんとか急所を外せたんでね。なんとか、生きてるって感じだ。おかげで…」
白い炎は徐々にシオンの身体を蝕んでいく。それに比例するように剣の輝きが増す。
「…時間ができた」
腰を低くして居合いの構えに入るシオン。朦朧とする意識は視界に靄をかける。見えるのは己の足元のみ、それでもシュタイナーの位置は不思議とハッキリと感じられた。
『不思議だ、とっくに倒れてても不思議じゃねぇってのに…。この感覚、前にもあったな。SAOでも、ALOでも、GGOでも…酸欠のような視界に靄がかかるような感じ。でも、そんな時は決まって身体がよく動くようになる。無駄な力が抜けて思考がクリアになってなんでもできるような気がしてくる…』
どうしてそんな風になるのかずっと疑問だった。
火事場の馬鹿力的なものだと思っていたがそうじゃない。
「この技は万全の状態で使いたかったんだがなぁ。何せ万全の状態じゃないと俺の身体まで吹っ飛んじまうからな」
「その状態てまだ動くのか?」
シオンはシュタイナーの問いに迷いなく答える。
「お前だってそうだろ?もう既に限界来て焦ってる。だからさっき勝ち急ぐような手段に出た」
「ッ…」
忘れていた、首筋がひりつく様なこの感覚。
心臓の音がやけにうるさく聞こえる。
自分の感覚が研ぎ澄まされていく…
これと似た感覚をつい最近味わった。
エクスキャリバー獲得のための空中要塞攻略戦。
崩壊する空中要塞の中を駆ける一矢。
無数の瓦礫の中でも強く感じることができたあの不思議な感覚。
「ああそうさ、とっくに限界なんか超えてる。それでも戦うんだ、全てを終わらせるために!!」
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