第七話 洋館の中でその六
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「だから千春ちゃんもね」
「わかったわ。じゃあ」
「うん、そういうことでね」
「そうした家族もいるのね」
「家族っていっても色々だと思うよ」
希望は千春の家にいた時とは全く違いだ。暗く沈んだ顔になってだ。
その顔でだ。こう言ったのだった。
「僕の家族は僕が駄目だからね」
「駄目だから?」
「僕のことは邪魔だ、鬱陶しいって思ってるから」
「そういう人達なの」
「そうだよ。大事なのは自分達だけで」
それぞれだというのだ。ただしそこにはだ。
お互いの、夫婦間の愛情はなかった。つまり二人共完全なエゴイストであるというのだ。
「僕は罵られたことはあっても褒められたことなんて一度もないよ」
「それが希望の御家族なのね」
「そうなんだ。だから来ないでね」
俯き沈んだ顔になってだ。希望は話した。
「千春ちゃんにとってもよくないから」
「それじゃあ」
「家族なら誰でも大事だ、愛情があるなんて嘘なんだよ」
「よく言われることでも?」
「うん、嘘なんだよ」
そうだとだ。俯いて話す希望だった。そのままで。
「愛情のない人もいるから」
「だから家族もなの」
「そう。そうした家族もあるんだよ」
「そしてその家族の人とは」
「できるだけ会いたくないよ」
暗い顔でだ。その家を前にしてだ。希望は話した。
「だからもう家にはあまりいないんだ」
「そうなの」
「まあとにかくね」
ここまで話してだ。そのうえでだった。
希望は千春にだ。こう言ったのだった。
「今日はこれでね」
「うん、これでね」
「さようならだね」
微笑んで言う千春だった。
「それじゃあまた明日ね」
「うん、明日ね」
千春は今はだ。希望に手を振ってだ。
そしてそのうえでだ。二人は別れた。刻は夕方に近付こうとしていた。
その赤くなりそうとする中をだ。希望はランニングに出てだ。それからシャワーを浴びてだ。家族、顔を合わせたくない両親と会話をせずに夕食をしてそれからだった。
彼はこの日も勉強をした。勉強も続けているうちにだ。
わかるようになっていた。そのことに喜びも感じていた。そのうえで一日を終えた。
そして次の日はだ。千春との約束通りだ。二人でだ。
植物園に来た。この町にある植物園、八条植物園だ。そこに入りだ。
一面の向日葵達、太陽の下のそれを見てだ。千春は笑顔で言った。
「夏だよね」
「うん、向日葵を見ると特にそう思うよね」
「これが夏なんだよ」
にこりとして言うのだった。この時も。
「明るくて強いお日様に照らされてね」
「そうしてだよね」
「うん。それでだけれど」
「それ
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