外典 【H×H編】
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少女はただ茫然と立ち並ぶビルの隙間から空を見上げていた。
少女の体は薄汚れていて、もう何日も風呂に入っていないのだろう髪にはふけが溜まりべた付いた髪は櫛を通さない程にガチガチと固まっている。
着ている服は擦り切れていてこれも洗っていないのだろう白かった色が黄ばんでいたり灰色に染まっていたりと元の色を想像する事も出来ない様相だ。
歳の頃は7歳ほどだろうか、痩せ細っていて碌に食べ物を食べていないだろう彼女の体は骨と皮しかないのではないかと思えるほどである。
アスファルトに仰向けで倒れ込み虚ろな瞳が見上げていた空は日が差すどころかポツリポツリと冷たい雨が降り始めた。
温かみを感じないその雨は少女の汚れを洗い流すどころではなく確実に彼女の命を削るだろう。
「……し…」
硬いコンクリートに背を預けた少女は空を見上げて手を伸ばし、そうか細く呟いた。
死ぬのかな…?と。
「……く……な……」
瞬間、少女は恐怖で否定する。死にたくないな、と。
伸ばした腕には数えきれないほどの青痣があり痛々しい。
その腕を首元へと持ってくると首に掛けてある紐をたくし上げると衣服の中に隠されるようにしまってあった鈍色に輝く宝石が姿を現した。
目を引くほどの美しさは無い。宝石と言うよりはただ磨かれた綺麗な石ころと言われても誰もが信じよう。
だが少女にとってそれは宝石だったのだ。
亡き母から唯一渡された形見だからこそ、服の中にしまい込み寂しい時や辛い時にこっそり取り出して見つめ不安を払拭してきたものだ。
それももう意味を成さなくなってしまうかもしれない。
それくらい少女の命は風前の灯火だった。
少女がここで死んでしまえば手に持った宝石は他の同じような境遇の物が持ち去ってほんの一握りのパンと同等の価値で売り払ってしまうだろう。
母の形見だ。母からもらった唯一の物だ。少女にはそれは耐えられなかった。
だから…
「…うっ……うぅっ…」
首紐を取り外した鈍色の宝石を少女は口に含み飲み込んだ。飲み込んでしまえば誰の手にも渡らない。自分が死んでも死体置き場で一緒に燃やされる事だろう。
これがわたしの最後の晩餐かと無味の鉱物に自嘲する。
飴玉なら良かったのに。
何とか少女の細い首元を通り過ぎたその鈍色の宝石は体内に入った事で思いもよらない効果を発揮する。
それは回帰の宝玉と呼ばれたアーティファクトで、二個で一対のアイテムだった。
その片割れは既に使用されてこの世界には存在していない。だが、それが幸いしたのだ。
この宝玉は回帰。つまり…
転生の宝玉からダウンロード…一部エラーにより読み取り不能
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