第一章
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夜刀神
常陸風土記の行方郡の部分に書かれていることである。時は継体帝の御代とのことなので六世紀前半となる。
この地で箭括氏の麻多智という者がいた、この者は郡の役所にいてあることを命じられた。
「西の葦原の開墾をですか」
「うむ、決まってな」
それでとだ、役所の上司が彼に話した。
「それでそなたにとなったが」
「左様ですか」
「しかしな」
上司は難しい顔で麻多智に話した。
「あの場所はな」
「はい、夜刀神がいます」
「あれは厄介だというな」
「話を聞きますと」
麻多智は上司に述べた、見れば切れ長で知性のある目で唇は薄い。面長で色は白く髭はない。黒髪は整っており官服が似合っている。
その彼がだ、こう言うのだった。
「夜刀神は角が生えた蛇の姿をしており」
「あの葦原に棲んでおるな」
「大勢、ああした湿った場所に多くいると聞いております」
「そうであるな」
「問題はその姿を見ますと」
「その者の一族は滅んでしまうというな」
「その様です」
麻多智は上司に話した。
「あくまで噂ですが」
「ではどうするかだな」
「滅ぶというのは祟りです」
それでとだ、麻多智は上司に話した。
「ですからまずは祓って」
「祟りがない様にするか」
「それから夜刀神をどうにかして」
そしてというのだ。
「あの葦原を穏やかにし」
「開墾していくか」
「そうしてはどうでしょうか」
「そこまで考えているならだ」
それならとだ、上司は麻多智に話した。
「そなたに全て任せたいがよいか」
「それでは」
「うむ、宜しく頼む」
こう麻多智に言ってだ、そのうえでだった。
開墾にかかる前に彼はまずは祓いを行った、彼自らが行いそれは念に念を入れて葦原全体を祓ってだった。
祟りを鎮めんとした、それをじっくりとしてだった。彼は率いている者達に言った。
「これで夜刀神を見ても大丈夫だ」
「祟りはないですか」
「これで、ですか」
「姿を見ても一族が滅びませんか」
「そうなりましたか」
「うむ、だが夜刀神は襲って来る」
そうなるというのだ。
「だから鎧と兜、剣や鉾、弓矢で身を固めて葦原に入ってな」
「夜刀神を退ける」
「そうしてですか」
「葦原を開墾しますか」
「その様にする」
こう言ってだった、麻多智は自ら戦う姿になりそうして葦原に赴いた、無論率いている者達も同じだ。そうしてだった。
葦原に入ると角を生やした蛇の大群が出て来た、そのうえで麻多智達に襲い掛かってきた。だが麻多智は率いている者達に落ち着いた声で言った。
「案ずるな、祟りはない。そして我等には刀や鉾、矢がある」
「それに鎧で身を包んでいます」
「噛まれても身は大丈夫ですな」
「だか
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