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北海の大魚
第二章
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「アイヌの人達は噴火湾に近付かないとか。もう一匹いるそうですし」
「もう一匹大きな魚がいますか」
「レブンエカシというのですが」
 水島はコップの中の焼酎を飲みつつ呉島に話した。
「こちらも舟を丸ごと飲んだそうです」
「やはり大きいのですね」
「飲まれた舟に乗っていた人達は魚の中で火を灯してそれに驚いた魚が吐き出して助かったそうですが」
「二匹もいるとは」
「そう言われています」
「あくまで伝承でしょう、ですが」
 それでもとだ、呉島は考える顔になって水島に話した。肴のソーセージがビールに実によく合っている。
「今度その噴火湾の近くの山に登ってキャンプをするので」
「そうなのですか」
「前から職場にいた同期と」
 名前を治道義也という、明るい顔立ちで黒髪を短く刈っている。性格は人の話を聞かないところがあるが親切で気さくな人物だ。背は一七〇位で中肉である。
「山の頂上まで言って」
「そうですか、ではその時に」
「試しに噴火湾の方を覗いてみますね」
「それで確かめられますか」
「いるかいないかは見て確かめたい性分なので」
 それでというのだ。
「そうしてみます」
「ではキャンプの後でお話を聞かせて下さい」
 水島はお互いの携帯の電話番号とメールアドレスを交換して話した、そして。
 呉島は水島と一緒に飲んだ後の休日、土日を利用して治道と共に噴火湾をすぐ下に見ることが出来る山に登った、そうして。
 山の頂上でキャンプを楽しみしこたま飲んだ、治道は呉島と共に飲んで食べた後の後始末をしてから彼に言った。
「今から寝るけれど北海道だから」
「夏でも涼しいからか」
「そう、今の季節でもね」 
 即ち夏でもというのだ。
「テントの中でもしっかりと寝袋に入って寝ないと駄目だよ」
「本州みたいにはいかないか」
「北海道はね、この山は羆は出ないけれど」
 北海道の自然で最も恐れられているこの獣はというのだ。
「それでもだよ」
「風邪は引かない様にする」
「そうしていよう」
「わかった、じゃあな」
 呉島は友人の言葉に頷き彼と同じテントに入って寝袋の中にも入った。そうして寝ていたが何分ビールを飲み過ぎ。
 寝ている途中に尿意をもよおした、それでぐっすり寝ている治道を起こさない様にして寝袋そしてテントから出て。
 木の傍で用を足した、そうしてテントに戻ろうとした時に。
 水島との話を思い出して噴火湾の方を見た、すると。
 海が紅に輝いていた、そしてその輝きは夜空にまで及び月の光が霞むまでだった。そしてその光の源の海面を見ると。
 鮭か鱒を思わせる姿の巨大な魚が泳いでいた、ゆっくりとだが確かに泳いでいた。そしてその魚と共にだった。
 もう一匹の魚が見えた、紅の光が強いので色ははっきりわからないが青い様
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