暁 〜小説投稿サイト〜
亡者船
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「風に逆らってです」
「動くんだな」
「それでわかります」
 鏡に映した様にそっくりな形と、というのだ。
「まさに」
「そうなんだな、じゃあな」
「神戸に行った時は」
「その連中にも注意だな」
「そういうことで」 
 龍馬は勝に話した、そしてだった。
 二人は神戸の幕府の海軍錬成所に行った、そこで海軍の船の研究や訓練をしたが肝心の勝はというと。
 陸にずっといた、そのことに幕府の者達は首を傾げさせた。
「何故勝殿は船に乗られぬ」
「どうしてだ」
「責任者だというのに」
「何故だ」
「何でも船酔いするらしい」
 このことが話された。
「あの人はな」
「何っ、海軍なのにか」
「それでもか」
「船酔いされるのか」
「あの人はそうなのか」
「それでだ」 
 その為にというのだ。
「船には乗られぬらしい」
「そういえば咸臨丸で亜米利加に行った時も」
 この時のことも話された。
「船酔いされて全く役に立たなかったとか」
「あの話はまことだったか」
「福沢君が何を言うてるんやと怒っていたそうだが」
「あの話はまことだったか」
「まさかと思ったが」
「そうだったか」
「とにかくすぐに船酔いする人だ」
 勝はというのだ。
「だからな」
「船には乗られず」
「そうしてか」
「丘の上か」
「いつも」
「まあそれでもな」
「坂本君がいるからな」
「彼は船酔いしない」
 船に乗っても全く平気だというのだ。
「だったらな」
「それならな」
「彼に頼るか」
「そうするか」
「そうしていこうか」
 こうして自然と龍馬が頼られることになった、そうして訓練も進めていったがそれで小豆島の近くでだった。
 船を動かしているとだった。
 不意に一隻の船が傍に来た、皆その船を見て言った。
「おかしな船だな」
「急に出て来たな」
「またこの船にそっくりだな」
「幕府の船か?」
「今日本でああした最新式の帆船持っているのは幕府位だ」
「この船もそうだがな」
「ここで他に訓練している船があったのか?」
 まさかという言葉も出た。
「まさかと思うが」
「何か他にそうした船があったか?」
「何だ、あの船は」
「しかもだ」 
 その船をよく見るとだった。
 帆をかけているが風の動きに逆らって動いていた、彼等はそれも見て言った。
「風の向きが違うぞ」
「逆だぞ」
「どういうことだ」
「あれが亡者船ぜよ」
 船に乗っていた龍馬がここで言った。
「まさにのう」
「前にお話していた」
「その船ですか」
「幽霊が載ってる船ですか」
「そうですか」
「これはぜよ」
 まさにというのだ。
「近寄っちゃいかん船ぜよ」
「この世でない連中が乗ってる船に近寄ったら」
「その
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ