第二章
[8]前話
「一緒に来いよ」
「後ろに乗って貴方の背中に捕まってなの」
「ああ、そうしないか?」
こう私に提案してきた。
「そうしないか?」
「私は車派だけれど」
「たまにはいいだろ、どうだ?」
「そうね」
彼も結構強く言ってきた、それでだった。
私も折れるみたいに頷いた、そうして彼に答えた。
「今度の休み晴れだったらね」
「一緒に行こうな」
「七五〇CCに乗ってね」
彼のそれにだ、こう話してだった。
私はその時のツーリングは彼の七五〇CCに乗ることになった、それでその休みは実際に晴れたがその時にだった。
彼は私にヘルメットを渡して笑顔で言ってきた。
「いつもしっかり捕まってろよ」
「ええ、そうするわね」
「さもないと危ないからな」
「安全運転でお願いするわね」
「それは絶対だからな」
大切な七五〇CCに掠り傷でもついたら大変だからだ、彼は運転も慎重だ。彼が言うにはちゃんとしてこそ本当のライダーだという。
それで私はヘルメットを被って彼にしっかりとしがみついてツーリングをはじめた、住んでいる場所から結構進んでだった。
山の公園に来た、緑の木々と川が奇麗な何度か二人で一緒に来たことのあるそこに来ると彼はヘルメットを脱いで私に笑顔で尋ねてきた。
「どうだった?」
「風を切る感覚だったわね」
私はこれまでのドライブの感想を述べた。
「本当に」
「よかっただろ」
「ええ、これはこれでね」
「これでお前もライダーだな」
「運転していないのに?」
「その感覚がわかったらライダーなんだよ」
風を切る、それがというのだ。
「それでな」
「そうなの」
「ああ、それでそこからバイクに興味を持ったらな」
そうしたらというと。
「もう本格的にな」
「ライダーになるのね」
「そうだ、よかったら乗るか?」
「免許持ってないわよ」
オードバイのそれはとだ、私は彼に返した。
「だから運転はね」
「出来ないか」
「そこまで興味もないし」
「じゃあこうしてか」
「風を切る感覚はよかったから」
正直それはかなりよかった。
「だからね」
「じゃあこれから時々でもな」
「乗せてね」
「そうするな」
このことは笑顔でやり取りをした、そうしてだった。
私達は景色が一番いいと思ったところで腰を下ろしてそこでお弁当を出した、そうしてそれを二人で食べた。帰る時も彼の七五〇CCに乗せてもらって帰ったツーリングはとても気持ちのいいものだった。それで私は時々彼に連れて行ってもらって楽しむ様になった。その時だけはオートバイのライダーになった。
EASY RIDER 完
2020・8・5
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