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歪んだ世界の中で
第五話 少しずつその十四

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「一緒に遊ぼう。幸せを一緒に味わおう」
「そうだね。それがいいよね」
「うん。それじゃあね」
 こう話してだった。それでだった。
 二人は海を楽しみ続けた。そしてその日もだった。
 幸せを感じた。そしてその幸せの中でだ。
 服を着替えて海から去る。その時もだった。
 希望は笑顔でだ。こう千春に言えた。
「楽しいね」
「うん、楽しいね」
「楽しかったんじゃなくてね」
「楽しいよね」
「別れても楽しさは続くんだね」
 希望はわかったのだった。このこともだ。
 そしてそれは千春も同じでだ。彼女もだった。
「明日もね」
「うん、会おうね」
「楽しいよ。今とても」
 別れの時も。そうだというのだ。
「これまでは別れるとなると寂しいだけだったけれど」
「それでも寂しさも」
「うん、幸せだから感じられて」
「そうして幸せの中だと」
「寂しいけれどそれでもね」
 もう辛くはなかった。それは消えていた。
 そしてその幸せを含んだ寂しさの中でだ。希望はだった。
 千春にだ。こう提案したのだった。
「明日また会えるけれどね」
「それでもなの?」
「まだ何処か行けるかな」
 こう言ったのである。
「少しね。何処かに行けるかな」
「うん。もう夕方だけれど」
 日は黄金から赤になっていた。それが照らす世界もだ。
 海は完全に朱に染まり銀色とコントラストを為していた。その二色の海も見つつだ。
 千春はだ。希望に答えたのだった。
「まだ少し時間はあるよね」
「だったら何処か行かない?」
「何処に行くの?」
「うん。潮の中にいたから」
 だからだというのだ。
「少し甘いものを食べに行かない?」
「甘いもの?」
「アイスなんてどうかな」
 ここで希望が言ったのはそれだった。
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