第百二十三話 耳川の戦いその二
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「これで夜は渡れぬ」
「夜にこの様な強い流れの中で泳ぐなぞ」
「河童でもなければ危ういですな」
「しかも具足を着けてでは」
「だから来るなら日中、それも日の出と共にじゃな」
その時にというのだ。
「来るな」
「そうかと、そしてその時は」
「やはりです」
「わかります」
「日の出と共に動くなら」
それならというのだ。
「もう夜のうちにな」
「備えます」
「早めに飯を食い」
「それがこちらにも見えます」
「だからな」
それでというのだ。
「敵をよく見ることじゃ」
「左様ですな」
「若し動いて来るなら」
「その時は」
「敵の動きに出る」
間違いなくというのだ。
「だからな」
「それを見て」
「そしてですな」
「こちらも応じますな」
「その様にする」
まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「まずは敵を見ましょうぞ」
「こちらは全て整っておる」
その準備はというのだ。
「あとはそれを崩さずな」
「敵を待つ」
「そうしますな」
「そのうえで」
「敵が来れば」
その時にというのだ。
「動くぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「ここでも待ちましょう」
「薩摩隼人は動くことが好きであるが」
即ち自ら攻めることがというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「動くべきでない時は動かぬ」
「それも大事ですな」
「ここでも言うが動かざること山の如しじゃ」
そうだというのだ。
「まことにな」
「だからですな」
「今は敵を見て」
「備えを崩さないことですな」
「決してな、そうしておくのじゃ」
こう言ってだった、義久は陣形を崩さずだった。
大友家の動きを見た、その間に彼は。
耳川の対岸に密かに伏兵を送りかつ高城の方にも忍の者をやって知らせた、そうしておいたのだった。
そのうえで再び大友家の動きを見ると。
「やはり大友殿はおられぬな」
「左様ですな」
「馬印がありませぬ」
「大友殿のそれが」
「大友殿はかなり後ろにおられますな」
「そこから動きませぬな」
「うむ、ではな」
彼がいないならというのだ。
「余計にまとまりがない」
「家の主、総大将がおられぬなら」
「それならばですな」
「尚更そうなり」
「それでは」
「勝手に動く御仁が出て来る」
そうなるというのだ。
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