第五話 少しずつその十二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「そういうことをすれば悪くなってしまうよね」
「その人がね」
「そうしたこともしない様にするよ。特にね」
「特に?」
「怨んだり憎んだり」
失恋とそこからの孤立、陰口等から。彼もそうした感情に捉われていた。これは仕方のないことだった。何しろ真人以外の殆どの人間から言われてきたからだ。
だがそれもだと。今の彼は言うのだった。
「そうしたことは絶対にしない様にするよ」
「そう思うといいの」
「やっぱりいいんだね」
「それがそのまま希望をよくしていくから」
それでだと。笑顔で話す千春だった。
「だから頑張ろうね」
「うん、そうしたことも頑張るよ」
「じゃあ泳ごう」
ここまで話してだ。それからだった。
「今からね」
「そうだね。じゃあ着替えて来るよ」
「いつもはプールで泳いでたけれど」
だがそれでもだと。千春は強い、それでいで輝く夏の日差しの中で言った。
「海で泳ぐのも好きなの」
「海もなんだ」
「だって。海から全部生まれてきたから」
それでだというのだった。
「だから海大好きなの」
「海は全ての母っていうよね」
「そうだよ。海はお母さんだよ」
「好きなのはそれでなんだ」
「うん、そうだよ」
夏の日差しの中での千春の笑顔もだった。
溢れんばかりの明るさがあった。しかしその明るさは。
決して眩しくはない。それは木の葉に照らされた光の様だった。
そしてその光を瞬かせながら。希望に話すのだった。
「千春もここでね。元はね」
「生まれたんだね」
「千春が生まれたのは山だけれど」
「けれど全てのものはね」
「海で生まれたから」
その海を見てだ。千春は希望に話す。
「だから海も大好きなの」
「それでなんだ」
「海も山も大好きだよ」
そのどちらもだというのだ。千春は。
そうしてだ。そのことを話してからだった。二人は一旦別れてだ。
それぞれ水着になってきてだ。その場に戻って来てだ。二人で笑顔で海の中に入った。
それからプールでするのと同じ様にだ。二人で泳ぐ。その中でだ。
千春は海から顔を出してだ。そして言ったのだった。
「海にいると。潮の味がして」
「潮のだね」
「風もそれを乗せてくれるから」
「潮もいいんだ」
「うん、大好き」
まただ。海を好きだと言う千春だった。だが、だった。
その中でだ。千春は少し寂しい顔になりだ。希望に言ったのだった。
「けれど今まで。ずっと気付かなかったけれど」
「気付かなかったんだ、千春ちゃんは」
「そうなの。ずっと千春も一人だったから」
それでだというのだ。
「一人だと今より楽しくなか
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ