第五話 少しずつその十一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そしてそのこともだ。希望に話したのである。
「その人の骨折のことは聞いてたわ」
「そうだったね。前にも話したし」
「可哀想とは思ったけれどお薬はね」
「あくまで僕の為だったんだ」
「そうだったの。けれど希望はお薬をその人の為に使ったから」
「じゃあ僕がしたことに」
「なるよ。全部ね」
千春は希望のその目を見て。そうして彼に話す。
「僕が友井君を助けたのかな」
「そうなるの。嬉しい?」
「友井君の骨折が治ったこと自体がね」
それ自体がだと答える希望だった。
「嬉しいよ」
「そうなのね」
「うん、僕の手柄とかはいいんだ」
「ただ。その人の怪我が治ったことが」
「そのこと自体が嬉しいんだ」
心から喜びがこみ上げてくることを実際に感じていた。その喜びの中でだ。
希望は満面の笑顔になり。千春に話した。
「友達だから。たった一人のね」
「そういう希望だからね」
千春もその笑顔を見て満面の笑顔になり述べる。
「千春も一緒にいるんだよ」
「僕がこういう性格だから」
「そう。人の外見は木の皮と同じだから」
「木の皮とって」
「そうだよ。同じだよ」
本当にだ。そうでしかないというのだ。
では千春にとって最も大事なのは何か。彼女はそれも言えた。
「けれど中はそれぞれ違うから」
「千春ちゃんはそれを見るんだ」
「そう、見るよ」
また言ってだ。そうしてだった。
希望にだ。また言うのだった。
「希望の心をね。見ているよ」
「僕なんか。性格悪いのに」
「人は誰だって性格悪いところもあるよ」
そのことも受け入れている言葉だった。
「けれどね」
「それでもなんだね」
「そう。いいところもあって」
そしてだった。
「どちらが多いか少ないかなの」
「じゃあ僕は」
「いいところが凄く多いよ」
ただ多いだけでなくだ。それ程までだというのだ。
「凄く凄くね」
「だったらいいけれど」
「その凄くいいところを増やしていけばいいから」
「今よりも」
「だから頑張ろう。頑張ればいいところはもっと増えるよ」
「頑張るっていうと」
その言葉からだ。希望が連想した言葉はこうしたものだった。
「つまり努力だね」
「何に努力するの?」
「今まではね。最近はじめたばかりだけれど」
ずっとしてこなかったことに悔やみも感じて苦笑いになった。だがそれでも言うのだった。
「水泳やランニング、勉強だけじゃなくて」
「他のことも」
「人を羨んだり憎んだり」
そうした具体的に浮かんだ感情をだ。彼は悪いと考えた。
そしてそのことをだ。彼は千春に話した。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ