第五百九十九話 クールじゃないその五
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「そうだったな」
「坊さんになっていたか」
「そうだな」
「信玄さんもそうだった」
謙信の好敵手である彼もとだ、ダンは答えた。
「謙信さんの本来の諱は輝虎だ」
「諱、ああ昔の日本は名前が二つあったな」
「元服したらな」
「それで諱か」
「俺達が輝虎と呼んでいてもな」
「当時の人達は呼んでいなかったな」
「絶対にな」
そうだったというのだ。
「信玄さんは名前は太郎だったからな」
「当時の人達は武田太郎さんと呼んでいたか」
「そうなっていた」
「成程な」
「それで謙信さんもな」
「それは出家してか」
「お坊さんの名前だ」
「信玄さんもか」
「それでこの人は平家だった」
ダンは謙信の家のことをさらに話した、彼はやはり日系国家出身なので日本のことにも詳しいのである。
「だから長尾家の頃は平景虎となる」
「そうなるか」
「そして信玄さんは源氏だったから」
甲斐源氏の嫡流である。
「源晴信となった」
「如何にも源平の名前だな」
「そうだな、尚謙信さんは元は長尾家だ」
「長尾家からか」
「上杉家に養子に入ってだ」
関東管領の職を譲られる時にそうなった。
「それで確か上杉家は藤原氏だからだ」
「藤原輝虎か」
「それで上杉平三だ」
「平三が謙信さんの本来の名前か」
「輝虎が諱でな」
「何かややこしいな」
「いや、輝虎は中国で言うと本来の名だ」
ダンはこう返した。
「それになる」
「劉備玄徳で言うと備か」
「それで平三が字でな」
「玄徳になるか」
「そうなる」
「そう言われるとわかるな」
「ただ日本は本来の姓は四つだ」
源氏と平家、藤原家と橘氏である。
「この四つだ」
「だから本来の名前は藤原輝虎か」
「謙信でなくな」
「そうなるか」
「俺達は普通に謙信さんと呼んでいるが」
「当時はそう呼ばれていなかったか」
「上杉平三とな」
「呼ばれていたか」
「ちなみ信玄さんは謙信さんが関東管領になったことを認めていなかった」
その好敵手の彼がだ。
「関東の仕置きをする立場とはな」
「そうだったのか?」
「ああ、それでだ」
ピーナッツを食べつつ話した。
「甲斐の守護としてだ」
「何か権威とかあったんだな」
「長尾家は越後の守護代の家だ」
「守護より下か」
「しかも武田家は源氏の名門だからな」
「格下の家が自分の上に立つとかか」
「認める訳にはいかなかった」
認めると自分が信濃を攻め掌握したことを否定されるからだ、実際に謙信はそれを否定して川中島で彼と何度も戦った。
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