第三百十五話
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第三百十五話 天本博士とお茶
天本破天荒博士はこの時昼食の後のお菓子を前にしていた、それは奇麗な和菓子でありそれ自体が芸術品の様だ。
そのお菓子を食べようとする博士にタロとライゾウは尋ねた。
「博士、今日のお茶は何かな」
「和菓子だけれどな」
「それだと日本のお茶だよね」
「そうなるよな」
「左様、今日のお茶は抹茶じゃ」
博士は二匹に答えた。
「それじゃ」
「えっ、お抹茶なんだ」
「それかよ」
「それ飲むんだ」
「これは意外だな」
「この和菓子は非常に立派なものじゃ」
博士は二匹に話した。
「だからじゃ」
「お抹茶にするんだ」
「そうなんだな」
「今小田切君が煎れてくれておる」
「あの、博士」
その小田切君が博士に言ってきた。
「僕茶道の経験は」
「ないか」
「はい、学生時代茶道部の催しにお邪魔しまして」
「飲んだことはあるか」
「それはありますけれど」
それでもというのだ。
「ですが」
「それでもか」
「自分で煎れたことはないです」
「そうか、しかしそれはよい」
博士は平気な顔で答えた。
「別にな」
「未経験でもいいんですか」
「ちゃんと煎れ方は勉強したな」
「一応は」
「ならそのまま煎れてくれればな」
それでというのだ。
「よい、まあ茶器は全部松永弾正殿から譲り受けたものじゃが」
「戦国時代の大悪人ですね」
俗に戦国三悪人の一人と言われている。
「斉藤道三、宇喜多直家と並ぶ」
「素顔は中々いい人であってな」
「そうだったんですか」
「その松永殿に貰ったものでな」
「滅茶苦茶価値ないですか?」
戦国時代そして松永久秀がかなりの茶人であったことから小田切君は尋ねた。
「それって」
「そうかのう、まあ気にすることはない」
「いや、気にしますよ」
未経験の自分がしては怖しかねない、そう思って小田切君は博士にこう言った。
第三百十五話 完
2020・11・13
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