第五話 少しずつその四
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「子供の頃から太ってたし。勉強もできなかったし」
「それでだったの」
「うん、出来が悪いから」
それでだ。子供の頃からだったというのだ。
「僕お父さんにもお母さんにもそうしてもらったことないんだ」
「一緒に遊びに連れて行ってもらったことは?」
「本当に無いよ。遊園地だってね」
子供が親に連れて行ってもらうだ。そこにもだというのだ。
「幼稚園で行ったのがはじめてで」
「そうだったの」
「一緒に行くのはいつも遠井君でね」
真人はここでも彼の親友だった。彼は希望にあくまで優しかったのだ。
「その他の誰ともね」
「そうした場所に行ったことなかったの」
「そうだったんだ」
寂しい笑顔での言葉だった。
「実はね」
「じゃあ映画館も?」
「遠井君と一緒に行ったことはあるよ」
「他の誰とも?」
「なかったんだ」
だからだ。本当に女の子と一緒に行くというのはというのだ。
「はじめてなんだ」
「デートの時と同じなの」
「そうだよ。同じだよ」
まことにそうだとだ。答える希望だった。
「そうだったんだよ」
「けれど今は違うわよね」
「今は?」
「そう、今は」
千春は話さなかった。話すのは。
現在のことだった。千春はそれを見てだ。
そのうえでだ。希望に対して話すのだった。
「今は千春と一緒だよね」
「うん、それはね」
「じゃあ一緒にいよう」
このうえなく優しい微笑みでだ。千春は希望を誘った。
「映画館でもね」
「そう考えればいいんだね」
「後ろに向いたら前に進めないよ」
「前に進もうと思ったらなんだ」
「そう、前を見よう」
これが千春の言葉だった。
「一緒にね」
「じゃあ」
「映画館行こうね、楽しくね」
「そうだね。そこにもね」
希望は前も見た。そしてなのだった。
前を見てそのうえでだ。彼は千春と一緒に映画館に入った。映画館のロビーは白と赤の奇麗なコントラストだった。そのコントラストの中でだ。
希望はポッポコーンも買った。そしてだ。
そこにコーラも買った。どちらも二つずつだ。
そしてそのうちの一つずつをだ。千春に渡してからだ。
彼はだ。少しだけ笑顔になれてだ。その笑顔で言うのだった。
「もうちょっとしたら上映時間だから」
「うん、中に入ってね」
「それで観よう」
そのだ。映画をだというのだ。
「そうしようね」
「うん、じゃあね」
「とりあえず買ったけれど」
中に入ることを決めてだった。その中でだ。
希望は千春がそれぞれの手に持っているポップコーンとコーラを見ながらだ。そのうえでだ。
彼女にだ。こ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ