最終章:無限の可能性
第276話「水面に舞う緋き月・後」
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普段であれば、感傷に浸る程度の効果しかない。
「ッッ……!!」
だが、“狂気”に呑まれた今ならば、狙っていた効果が発揮される。
緋雪は、拳を自らの額に殴りつけた。
「っ、ふぅ……ッ……!」
ギリギリ、正気を取り戻す。
自分にとって大事なモノを想起する事で自我を取り戻す。
そんな間接的に作用させる術式だったが、ものの見事に成功した。
しかし、それを喜ぶ時間はない。
「(このままやれば、また“狂気”に呑まれる……!)」
即座に術式を編み、自ら五感全てを封印する。
平衡感覚すら勘で探り、高速で動き続ける事で出来る限り攻撃を避ける。
「(……お兄ちゃんなら、他の皆なら、どうする……?)
既に切り札である対策は使った。
後何度か同じ事を出来るとしても、その内完全に“狂気”に呑まれてしまうだろう。
「(……今ここで、この状況を打破する手段を……!)」
逆転の一手を必死に考える。
しかし、一向にそれは浮かばない。
「(……ダメ。やっぱり、私と“狂気”は切っても切れない関係―――)」
極彩色の極光が直撃し、またもや“狂気”が思考を蝕む。
直前まで考えていた事も、そのダメージで途切れてしまった。
「(……なら、敢えて切らずに受け入れれば……?)」
思い出したのは、無我の境地に至った事で導王流を極めた優輝の姿。
自らと言う訳ではないが、あれも半分気絶したがために至った。
同じように、“狂気”を受け入れてしまえばいいと思ったのだ。
「(……そうだ。もう、私は狂気を乗り越えたんだ。その“意志”があれば……!)」
一歩、脚を踏み出す。
その脚が触れた場所から、水面に波紋が広がる。
血の色に染まっていた水面は、再び鏡のような水面へと戻っていく。
否、厳密には血のような赤色のまま、鏡のように透き通った水面へとなっていた。
「縺ェ縺ォ?」
「鏡の如く、透き通れ……我が心……!」
―――“狂花水月”
緋雪の瞳が煌々と紅く光る。
その光は、かつて狂気に呑まれた時と同じだ。
だが、当時のように淀んだ光ではない。
どこまでも透き通ったような、そんな綺麗な光だ。
「………!」
跳躍し、吹き飛ばされた後地面に刺さっていたシャルを引き抜く。
直後、再び光の刀身と赤と青の螺旋が伸びる。
「豁サ縺ォ縺槭%縺ェ縺?′!」
「ふッ!!」
放たれた極光と触手が、細きれになる。
荒々しくも繊細な太刀筋で、緋雪が斬り刻んだのだ。
「ッッ!」
さらに、
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