ターン38 パラダイムシフト
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にする。
「糸巻の、アンタは気持ちいいぐらい素直に動いてくれたよ。私のことなんて気にしなくなるぐらい、たくさんあの子に構ってくれた。なに、あの子についてはやり直した世界で、またゆっくりと教え直すさね。あの子に天性のセンスがあるのは、本当だよ」
「ちっ……」
悲しいことに、糸巻はよく理解していた。嫌でも思い出さざるを得なかった、といった方が正確かもしれない。喋りながらデュエルディスクを構えた老人の姿が、まるで2倍にも3倍にも大きく見える。
無論、それは目の錯覚だ。全身からゆらりと立ち昇る闘気が、視線だけで人を射殺せそうなほどに鋭くなった眼光が、格の違いを戦う前から彼女の全身に嫌というほど叩きつけている。ふと気が付けば、彼女自身も意識しないうちにその両足は今にも倒れ込みそうなほどに震えていた。
普段の糸巻ならばそんな自分の無様さを、心のどこかで歓迎さえしていたかもしれない。これでようやくアタシは負けられる、精いっぱい戦って、それでも力及ばず負けることができる。そうすれば、この13年間の苦しみから解放されるんだと。だが、それは今の彼女にはできない相談だった。この戦いは、負けるわけにはいかなかった。たとえ世界が滅びようが知ったことではないが、全てを否定することはそれ以下の冒涜に他ならない。
だから、彼女は息を吸う。自分1人では、運命は変えられない。ならば、どうする?答えは決まっている。どんな手を使ってでも、彼女はここで勝たねばならない。この13年間の世界の歩みがどれだけデュエルモンスターズへの侮辱と恥辱にまみれたものだとしても、その果てである今には一筋の光が生まれていることを証明するために。世界の歴史は、断じて間違っていないんだと証明するために。
だから、彼女はその名を叫ぶ。この13年間の彼女の象徴たる肩書き、デュエルポリスとして迷いなく。
「鳥居ーっ!!いるんだろうが、とっとと出てこいこの野郎!」
「ここに。つーか糸巻さん、いつから気づいてたんすか?」
そして鳥居浄瑠が、デュエルポリス糸巻太夫いちの部下が、何食わぬ顔してその隣に現れる。呼びかけに応え突如として現れた男にふんと小さく鼻を鳴らし、その背中を平手で無造作に叩く。
「最初からだ、馬鹿。おおかた引戸の……マネージャーの差し金だろ?」
「……バレてましたか。あの人、糸巻さんが出てってすぐに目を覚ましまして。脱出準備は俺がやっておくから、だそうです。それと、ひとつ伝言っすよ」
「伝言?アタシに?」
「俺は裏方、お前は表舞台。昔と何も変わらないだろう、まさかミスなんてするわけないよな?だそうで」
「はっ、あの野郎。マネージャーの分際でアタシをこき使おうたぁ、随分『赤髪の夜叉』も舐められたもんだ。あーだこーだと口やかましくて、妙なとこだけ小賢しい。奴もア
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