ターン38 パラダイムシフト
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「意外かい?だがね、ひひっ。ほんの少しでもいい、考えてもみるといいさ。デュエルモンスターズがいくら優れていると言っても、所詮カードはカード。なぜ、世界はそれにあそこまで熱狂できた?なぜ一介のゲームに過ぎないものが、世界情勢を左右するほどの一大ムーブメントになった?仮にデュエルモンスターズそのものにそれだけのポテンシャルがあったとして、ではなぜこの私が表舞台に立つまでそうはならなかった?遥か昔に、私がそう願ったからさ。あらゆる不可能を可能とする錬金術のカード、賢者の石−サバティエルを実体化させて、ね」
「嘘だ!」
自分のいる世界全ての前提が、絶対に手出しされないはずの部分から根こそぎぼろぼろと崩れ落ちていく。そしてそれを、糸巻にはどうすることもできなかった。
「残念だがね糸巻の、嘘じゃないよ。あの時、デュエルモンスターズを歴史の中枢に潜り込ませるという願いを叶えた際、サバティエルの実体化の膨大な負荷に耐えきれずに最初の『BV』は完全に消滅し、あの技術の再現には長い時間がかかった。何年もプロデュエリストとして資金を稼ぎ、そのほとんどを研究に充て、また失敗し。ようやく不完全な再現に成功した13年前のあの時、私はそれを世界に公表した。あるいは私の思いもよらなかった進化がデュエルモンスターズに起きるかもしれないとの願いを込めて、ね。そうさね、私は見誤っていた……まさか、あんな馬鹿げたことが起きるとは。テロリストの出現を読めなかったのは、紛れもなく私の失態さ。糸巻の、アンタらにはこの13年間、本当に苦労を掛けたね。こんな言葉じゃあ、何の足しにもならないだろうが……」
すまなかった。深々と頭を下げてそう告げた老人の顔には、積み重ねてきた年月と苦労の重みが深く刻まれている。それは、この荒唐無稽な与太話がまぎれもない真実であると告げていた。
「だけど、それもここで終わる。今からこのプラントに極度の負荷をかけ、本当に融解させる。糸巻の、アンタの部下が持ち込んできたあれだけの爆発物のカードを一斉に実体化させたうえで直接起爆させれば、火力としちゃ申し分ないだろうさ。ひひっ、いい花火だろう?そして完全にメルトダウンを起こす最期の瞬間に、このカードを世界規模で実体化させるのさ」
馬鹿げている。だがそうは口にさせない気迫が、もはや妄執と言っても過言ではないほどの異様な力がその言葉にはこもっていた。見知った老人、怪しくはあるが善人だと思っていた好々爺。彼はその心の内に、ずっとこの狂気を飼っていたのだろうか。告白の衝撃も相まって口をきくことすら敵わない糸巻の目線が、自然とその引っ張り出したカードに向けられる。
「タイム・ストリーム……?」
「本来このカードは、化石モンスターの専用サポートでしかない。だがね、考えても見るといい。なにせ新生
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