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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
船団の国〜アスターテ連邦共和国〜(下)
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うな、とリヴォフは苦笑した。
「総裁閣下が出てくれるならいいんだけどな」
グラスは片頬をゆがめて返答する。
「莫迦をいうな、それなら貴方に総裁職を任せるぞ」
先達を相手によくも、などと思わせない竹を割った仲に稚気をまぶした独特の語り口が彼の魅力である
そいつぁごめんだな。とリヴォフも笑う。
総裁として強権を振るうように見せかけて議会や閣僚評議会とひたすら調整をこなすのはまっぴらごめんである、国防長官を数期務めた時点でもう内政に関わる気はないのだ。
「後任を見繕ってくれるならありがてぇけどなぁ」
ごめんだよ、とグラス総裁は苦笑した。
「貴方を選んだ者達にこたえるのは、一番接してきた貴方だろう、老。貴方が貴方の支持者たちが何を求めているのかを考えて選び、整えることだ」
リヴォフは参ったな、と頭を掻いた。グラス総裁はタカ派の愛国的軍人政治家であるが、民主主義者でもあったのだ。
「‥‥‥そういえば、だ。平和の箱舟が議席をとったそうだがそれからどうなんだい」
グーヴィヌは話をそらしたな、と面白そうに微笑しながら答える。
「数は多くありません、だがこちらでも現地民で首都圏と比べると見る影もないですが、相応の組織を作ることができたのは意外です。どこからか資金が流れているということでしょうが現地での支持層の動向は――フリシエさんの方が説明しやすいか」
本来はその手の支持層を吸収するはずであるハト派の重鎮であるフリシエ首相がうなずいた。
「最近は学生を中心に若い層に少しずつ浸透している。急進人民党の議員団が連携できないか探りをいれているようだ。規模は小さいし議会に出ている連中はそれなりに現実を見てパフォーマンス落としどころをわきまえているが――」
はぁ、とため息とつく。フリシエは頭を振った。
「ハト派よりも急進的で小気味いいのだろうが、組織が膨れるにつれて振り回され始めているようだ。小気味よさに酔う支持者など厄介でしかない‥‥‥帝国と和解、か」
「イゼルローン要塞がある限りはそれは降伏である。イゼルローン要塞が破壊され、よほど帝国が弱体化すればあるは――であるがなぁ」
リヴォフは苦笑する。
「恨みつらみを共同体が忘れることは消してない」
グラス総裁は切りすてた。
「恨みつらみがたまるのであれば相容れぬ敵がいたほうが良い」
「”同盟市民の権利は普遍的である、それを信仰する同盟市民が保護する限りは”か?」
「そうだ、であるからこそ”同盟市民”であることを維持し続けなければならない」
リヴォフはそうかい、と肩をすくめた。
この時は、今はまだ雑談程度であった。この夜の会話でグラス総裁が懸念していたことも、フリシエ首相たちの不安もリヴォフはまだ身近に迫るものだとは認識し
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