千葉県山武市が独自の緊急事態宣言
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大な額のふるさと納税が集まったようだ。山武市のイチゴも相変わらず好調らしい。
千葉県内の知名度の低い市町村による緊急事態宣言は、連日のように続いている。
もう間違いはないだろう。山武市は最初から宣伝目的で緊急事態宣言を出したのだ。手っ取り早く全国での知名度を上げられるお得な宣伝方法だったというわけだ。
三十倍の出荷量が実現できたのも、現地のイチゴ園のホームページに新しい雰囲気のものが多かったのも、事前に市が農家に根回しをして準備させていたのかもしれない。
そして今、山武市がうまくいっていることを確認した千葉県内の他の市町村が、山武市のまねをしている。どうもそういうことのようだ。
『千葉県匝瑳市で独自の緊急事態宣言が出されました』
また知らない市の緊急事態宣言がテレビから流れてくる。
『緊急事態宣言のバーゲンセール(笑)』
『この乱発されてる状況が緊急事態だろw』
俺はそれらのツイートのいいねボタンを押すと、山武市のイチゴを注文した。
* * *
千葉県の市町村による緊急事態宣言ラッシュは、唐突に終わりを迎えた。
「売名目的の緊急事態宣言はやめるように」と、政府から怒られたらしい。
当初政府は「コメントは控える」としていたのだが、とうとう堪忍袋の緒が切れたようだ。まあ当然だろう。
俺としては、ラッシュ終了は割とありがたかった。知らない市の緊急事態宣言のニュースが続いてネットが荒れていると、他のニュースが全然頭に入ってこなくなるからである。
あ。
そういえば忘れていたが、危ぶまれている五輪開催はどうなっているのだろう?
ちょうどニュース番組がやっている時間だった。
五輪の話題も出るかもしれない。俺はテレビのリモコンのボタンを押した。
『今入ってきたニュースです。山武市が二〇三二年夏季五輪の招致を目指すことを表明しました』
……。
やれやれ。
世界に羽ばたくであろうイチゴを、俺は注文した。
− 完 −
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