第五章 トリスタニアの休日
第四話 魅惑の妖精
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動きが取れなくなっている。
「きっ貴様ら! わたしが先だ! 貴様たちは後にしろ!」
「そっ、そんな! それだけは勘弁してください!」
仲間割れを起こして我先に逃げ出そうとする貴族たちに向かって、ルイズが杖を振る。それと同時に扉の床に穴があき、悲鳴を上げ貴族たちがまとめて穴の底に落ちていく。
穴の底で貴族たちは、恐る恐ると上を見上げると、無表情ながらも怒りで爛々と燃る目で見下ろしてくるルイズに気付き、魂裂けるような悲鳴を上げた。
「ヒギイイイイイ!!」
「五月蝿い」
「ッッ!!」
ぼそりとルイズが呟くと、貴族たちは互いの口を手で塞ぎ、悲鳴を飲み込んだ。
「あ、あの……あなた――あなたさまは一体どこのどなたですか? 高名な使い手とお見受けいたしますが……」
何も言わず見下ろしてくるルイズに、チュレンヌがビクビクと震えながら声を上げると、ルイズがチュレンヌに懐から取り出した女王の許可状を突きつけた。
「へ? え? ああ!! そ、そんな……」
「ここで見たこと聞いたこと知ったことは他言無用よ……もし誰かに言ったら……」
ニッコリと笑うとルイズは貴族たちに向かって杖を向けた。杖を向けられた貴族たちは、互いに身を寄せ合い、震え始め、顔がブレる程の勢いで頷きだす。それを見たルイズが杖を逸らし、顎で出て行けと示すと、貴族たちは慌てて穴から這い出し逃げ出そうとしたが、扉に前に仁王立ちする士郎を目にして固まった。ガクガクと震える貴族に対し、士郎が壊れた店内を指差し、修理代とぼそりと呟くと、慌てて懐から財布を取り出し、それを放り捨て始め逃げ出す。
士郎が貴族たちが投げ捨てた財布を拾い終えた
時には、既に貴族たちの姿はなく、微かに夜の闇に消えていく後ろ姿だけが見えるのみであった。
ルイズの開けた穴を見下ろし、どう応急処置をしようかと頭を捻ると、士郎は唐突に飛び退いた。
「シロちゃああああん!!」
「いい加減飛びかかってくるのは勘弁してくれ」
士郎が先程までいた場所に飛びかかってきたスカロンは、士郎が逃げた先にすぐさま向くと、再度飛びかかっていく。逃げ場を塞ぐように両腕を大きく広げ向かってくるスカロンの腕を掴むと、ルイズが開けた穴にスカロンを放り込む。重く鈍い音が穴の底から響くのを確認した士郎は、投影した板を穴の上に並べると、これまた投影した釘とトンカチを使って穴を塞いだ。
昔取った杵柄というか、あっと言う間に穴を塞いだ士郎が、汗もかいてもいないのに、額を手の甲で拭く真似をすると、女の子たちの歓声と拍手が鳴り響いた。
「は?」
「え?」
士郎とルイズが戸惑った声を上げ、振り返ると、女の子たちがルイズたち目掛けて走り寄ってきた。
「すごいすごい!」
「
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