第五章 トリスタニアの休日
第四話 魅惑の妖精
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郎達から手を離し、スカロンは欠伸を片手で隠しながら店の奥に消えていく。スカロンの姿が見えなくなると、士郎達は互いに顔を合わせ、声を出さず小さく笑い合った。
「あはは……全くあの人は……」
「ははっ……まあ、心配を掛けたんだ。これぐらいはな」
「まあね……それじゃ、あたしももう寝るわ。……今日はありがと……お休み」
「ああ、お休み」
士郎の背中から降りたジェシカは、士郎から少し離れると、肩に掛けられた執事服の上着を抑えながら振り向き、
「……シロウ」
「なんだ?」
「好きよ」
「……は?」
「お休み」
「なっ」
言い忘れたことがあったとばかりに何気なく言われた言葉は、全くの予想外の言葉であり。思わず声が漏れた時には、既に顔を真っ赤にしたジェシカが逃げるように駆け出した後であった。どう言った意味だろうと頭を抱えながらも、部屋に戻ろうとした士郎が二階に上がるための階段に足を乗せると、上から冷めた声が降ってきた。
「機嫌が良さそうね」
「……何処をどう見たらそう見えるんだ」
「さあ?」
「さあ? とは何ださあ? とは。それでどうして機嫌が良いと言えるんだ」
「……女の感?」
「……随分とあてにならない感だな」
「まあ、あんまり関係ないからね」
「……何にだ」
「あんたへのお仕置きに」
「……お仕置きって……何でだ」
「簡単よ……わたしがムカついてるから」
「随分と理不尽だな!」
余りな言葉に思わず突っ込んだ士郎に向け、
「うるさいわね! 心配して起きてたらあんな胸だけ女に手を出していたなんた!! いい機会だから他の女に手を出せないよう調教してあげる!!」
「全力で遠慮する!!」
どこからともなく取り出したムチを宙で音を鳴らしながら襲いかかってきたルイズから飛び離れた士郎は、外に通じる扉に向かって駆け出していく。
「待ちなさい! 士郎!」
鬼気迫るルイズの声を背に、士郎は店から飛び出す。店から飛び出した少女を見つけるためではなく、ただ逃げるために。
「っ何でさああああああ!!」
月と星が見守る中、深夜の静寂の中、狼の遠吠えの代わりに……男の悲鳴が響き渡った。
チップレース最終日。
開店直前にスカロンは、女の子たちに対し現在のチップレースの状況を発表していた。
「じゃあ現時点のトップの三人を発表するわね! まずは第三位! ジャンヌちゃん! 百一エキュー二十七スゥ!」
金髪の少女が頬に手を当てニコリと笑うと、鳴り響く拍手に応えるように優雅に一礼する。
「第二位! ルイズちゃん! 二百五十七エキュー三十七スゥ、七ドニエ!」
わあ! という感嘆の声と共に拍手が鳴り響く。一瞬喜色の笑み
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