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魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
最終章:無限の可能性
第275話「水面に舞う緋き月・前」
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覆っていた紅い暗雲はなく、星々が輝く夜空が広がっている。
 赤い月はそのままだが、その明かりは大地を見守る優しさに満ちていた。
 そして、血のように赤い水面は、空を反射する程の美しき水面へと変わっている。

「っ………」

 その固有結界を見て、神は僅かに怪訝そうにする。
 以前見た光景と違っていたからだろう。

「ッッ!」

 緋雪は、その隙を見逃さない。
 転移と縮地で肉薄し、掌底を放つ。
 直後、その移動時の衝撃波で水面に波紋が広がる。

「がっ!?」

 その波紋が神の足元を通った瞬間、衝撃が神を打ちのめす。

「はぁああああああっ!!」

 反撃を許さない猛攻を、緋雪は仕掛ける。
 波紋を利用した衝撃波、上空の星を媒体にした流れ星の如き攻撃。
 そして、緋雪自身の攻撃によって、反撃すら相殺して神を打ちのめす。

「(結界によって“天使”とも分断した。これで、分身がやられようと、私さえ勝てば勝利になる……!)」

 掌底をめり込ませ、その反動で折れ曲がった上半身をかち上げる。
 間髪入れずに転移し、蹴りでその体を吹き飛ばす。

「がぁっ!!!」

 獣のように着地し、すぐさま緋雪へと襲い掛かる神。
 別段、緋雪の身体能力が上がった訳ではないが、今はその動きが良く視えた。

「シッ!!」

 カウンターばりに繰り出される手刀の一突き。
 肩が抉り取られる代わりに、緋雪も下顎と喉を抉りぬく。
 そして、追従する波紋で神を吹き飛ばした。

「っ……なぜだ、なぜだァ!」

「………」

 一方的……とまではいかないが、精神性においては、緋雪が上となっていた。
 全く揺らぐ事のない“意志”に、神が痺れを切らしたのだろう。
 何より、以前はあったはずの“狂気”が緋雪から感じられなかった。

「お前は“狂気”を持っていたはずだァ!それを……それを……どこへやったァ!?」

「……言ったはずだよ。克服したって。乗り越えたって……!」

 シャルを展開し、魔力と霊力を纏わせる。
 普段の炎の大剣とはまた違う大剣を展開する。
 霊魔相乗に応じた、白く輝く刀身に赤と青の螺旋が纏う。

「人は、命は成長する!その度に何かを乗り越える!弱さを、恐怖を!そして、乗り越える度に、強くなる!」

「ッ……!」

「もう、私は狂気に囚われない!!」

 そして、その大剣を横一閃に降りぬいた。

「討ち()て、輝閃(きせん)!!」

〈“L?vateinn ?berwindung(レーヴァテイン・ユヴァヴィンド)”〉

 白き刀身が、神を切り裂いた。
 さらに、赤と青の螺旋の光が神を引き裂く。
 明確な“意志”が直撃した今、“狂気の性質”と
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