第59話 エル=ファシル星域会戦 その3
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
闘装甲服を着てトマホークを振るうのが仕事です。たしか編成は七四六年。帝国からの亡命者の子弟で編成された部隊で、類まれな白兵戦能力を有しております。ですがボロディン少佐が知りたいのはそう言うことではないのでしょうな」
「ええ、まぁ」
「一言でいえば『いけ好かない気障な同盟軍人モドキ』です」
「……おぉ」
左眉だけ小さく動かしたジャワフ少佐の、太い唇から発せられた短い評価というより悪口は、原作を知る俺としては強烈なものだった。どうしたってヤン一党。薔薇の騎士連隊のカッコよさ・気風に贔屓になりがちな視点ではなく、その正反対からの見方には驚かされる。だがその舌鋒の鋭さに比して、ジャワフ少佐の顔は憎悪というよりは敬して遠するといった感じだった。
「人は産まれを選べませんからな。問題はその産まれを我々も彼らもお互いに気にしすぎる点でしょう。ただ孤立しやすい土壌ゆえに、花はしょっちゅう色が変わる」
「……気障、というのは?」
「誰が付けたか考えたか小官はわかりませんが、『薔薇の騎士』。名は体を現す、というのでしょうな。自分達は『騎士』であり『軍人』ではない。そういう気風が充満しています。今の副連隊長リューネブルク中佐が特にそうです」
「お知り合いで?」
「白兵戦戦技大会で会ったことがあります。一度対しましたが、二〇秒で気絶しました。勿論小官が、ですが」
「……」
「その強さこそが彼らの心の支えでもあるのでしょう。一人の武人としては尊敬できますが、敗者に対する配慮、規則と友軍に対する信頼の欠如、有能無能以前の国家と国民に対する意識、そういう面では彼らは同盟軍人ではない。小官はそう思います」
おそらくはこれこそが薔薇の騎士連隊の苦悩の根源かもしれない。苦難の末帝国から亡命してきて、新天地では冷たい視線にさらされ、すっかり擦り切れて大人になった。ジャワフ少佐はそういう背景も理解しているし、隊の創設意義がプロバカンダであることも理解し、単純に亡命者だからと言って嫌っているわけでもない。恐らくは相当『まとも』な部類の軍人だ。そういったまともな軍人にすら敬遠されるゆえに、歴代の連隊長の半数が見知らぬ故国へと向かわせた。シェーンコップの言い草ではないが、あわれなものだと思う。
俺がぼんやりとそう考えていると、ドタドタと士官食堂を駆け出していく陸戦士官たちをよそに、ジャワフ少佐が悪戯そうな視線を交えて、俺に言った。
「もしかしてボロディン少佐は陸戦の、白兵戦訓練はお好きですかな。幸いこんなですから、ジムに空きが出来そうですが」
「陸戦の専門家を前に、白兵戦が得意ですなどとは口が裂けても言えませんよ」
「少佐は学年首席と伺っておりますが?」
「陸戦はあくまで机上です」
「では机上から実践へのステップアップはいかがですかな? 例の
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ