第59話 エル=ファシル星域会戦 その3
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かったが俺の同期がいたようで、「まさか学年首席とこんな場所でお会いできるとは思ってもみませんでしたよ」と変な感心をされてしまったものだ。
連絡士官となれば、地上戦部隊司令部にいて常に宇宙艦隊との連絡を取り合いつつ、地上戦の状況を攻略部隊司令部に報告し続けるのが仕事だ。攻略部隊司令官はビュコックの爺様であり、地上戦部隊の先任指揮官のディディエ少将はその指揮下で地上戦を統括する以上、当然作戦進行状況の報告は爺様に対して行われる。すなわち今回の任務は正常な作戦指揮が行われているか、正しい報告が行われているかどうかの『お目付け役』に近い。
明らかに識見外の人間の闖入、しかも司令部内では針の筵の中になることを爺様もわかっているだけに、俺に対して別任務である『戦後処理事前調査』を加えた。陸戦の戦闘指揮に口をはさむ必要などないほど忙しくさせてしまえば、地上戦部隊側の俺に対する隔意もそれほど大きくなることはないだろうという心遣いかもしれない。ありがたいとは思うが、自走端末が必要なほど忙しくなる仕事を与えるのはどうなんだろう。
そして早速とはいえ、降下母艦アルジュナで俺には地上戦部隊側の連絡士官と『共同生活』することになる。いわゆる『お目付け役のお目付け役』で、あちら側も連絡士官業務は兼任。所属は第三二装甲機動歩兵師団で、地上戦司令部内統括予備参謀。いわゆる師団より派遣された無任所司令部要員で、前線で所属を跨ぐような戦闘部隊が必要とされた時、応急的に指揮する為前線派遣される経験と識見と調整能力に富んだ中・下級指揮官、なのだが……
「まずまともな戦闘状況なら、私など無駄飯喰らいというわけです。気楽なものですよ」
分厚い肩を竦めて自嘲するのは、三二歳という年齢の割に老けて見えるダニエル=サントス=ジャワフ少佐だった。原作ではヤンが同盟政府に拘束された時、まんまとシェーンコップとアッテンボローに逃げられたわけだが、話してみれば無能とは程遠い人物だと分かる。そりゃあ帝国軍の監視下で弱体化した都市型戦闘『中隊』二個と、白兵戦特化の薔薇の騎士『連隊』では質でも数でも勝負にはならないのは、自明の理だ。
降下母艦の中で忙しく出撃準備に勤しむ将兵を他所に、今のところは暇な部署な俺とジャワフ少佐はのんびりと士官食堂の隅っこでお茶を飲んでいたが、やはりこの世界に来た以上、陸戦の専門家には聞いてみたい質問があった。
「薔薇の騎士連隊、ですか? ほう、やはり宇宙戦部隊でも彼らの評判は高いのですな」
大柄ゆえに握る紙コップがお猪口にも見えるジャワフ少佐は、中に入っている温くなったコーヒーの半分を喉に流し込むと、なにかを思い出すかのように数秒躊躇ったのち、俺に応えた。
「高火力高機動軽装で都市型戦闘を主体とする小官とは違い、彼らは白兵戦。戦
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