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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第59話 エル=ファシル星域会戦 その3
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イェレ=フィンク艦長よりもたらされ、それをもって爺様はエル=ファシル攻略作戦の第一段階終了を宣言した。

 戦闘参加した同盟軍の兵力五二万四三〇〇名、同戦闘参加艦艇四四〇六隻。うち戦死者は二万二五〇〇名余、喪失戦闘艦艇三一八隻。一方で帝国軍は未だモンティージャ中佐達が集計している最中であるが、戦闘参加艦艇三三〇〇隻余のうち、降伏した残存艦艇が三九七隻。逃走した艦艇がほぼないことを考えれば、喪失率八八パーセント。そこから推定される戦死者数は三五万五五〇〇名余。第六次イゼルローン攻略戦で帝国軍が被った損害とほぼ同数になる。

 勝利、それも完勝したというのに、俺は素直には喜べない。味方に被害が出ることはわかっていたが、マーロヴィアの草刈りの時とは文字通り桁が四つも違うのは尋常でなく胃を痛める。それに三五万以上の帝国軍の戦死者。単純にあの『ヴェルダンの戦い』がたった四時間で繰り広げられたのだ。一二〇〇時、ほぼ勝敗が決している状況下で配布された戦闘糧食に、俺はまだ手を付けることができないでいる。

 そんな中でも、攻略作戦は次の段階へと進む。

「艦隊決戦の完勝、実にお見事でした。降下陸戦に関して、閣下の名誉を一片たりとも傷つけぬよう陸戦部隊指揮官として全力を尽くすことをお約束いたします」
 武骨な、まさに歴戦のレンジャーという表現以外にしようのないディディエ少将の、宙陸の所属を超えた賞賛と自らの能力に自信を持っている言葉遣いに、応対した爺様も悪い気をしなかったようで……
「もし対地攻撃の援護が必要なら可能な限り融通するが、何かあるかね、ディディエ少将」
「既に降下母艦と無人偵察衛星でおおよその地表状況は把握しております。今のところ、宇宙艦隊に攻撃お願いするような対空・対軌道攻撃施設は確認されておりません。まず連絡将校一人で十分かと」

 ディディエ少将の返答に、爺様は一度ぐるりと司令部の要員を見回すと、咳払いをして言った。

「小生意気な孺子でもいいかね?」
「作戦会議で啖呵切った若い少佐殿ですな。よろしいので?」
「何事も勉強じゃからな。陸戦の何たるかをじっくり見分させてやってくれんかの」
「っははははは。了解しました。降下母艦アルジュナで、少佐をお待ちしております。では」

 戦闘に出る前というのに、まったくの余裕の表情を浮かべ大声で笑うディディエ少将の敬礼姿が画面から消えると、爺様は俺に向かって言った。

「そういうわけじゃ。戦後処理で貴官が担当する仕事はそれほど多くない。ファイフェルに任せて、地上で羽を伸ばしてくるといいぞ」
「羽を伸ばすと言われましても、地上戦はこれから行われるものと考えますが?」
「一番面倒なのは地上戦終了後の後始末じゃ。マーロヴィアの時に冴えを見せた、民政への引継ぎ準備は全て貴官に任せる
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