第一章
[2]次話
失踪した犬
この時常盤美和は憔悴しきっていた。愛犬のポチがいなくなっていたのだ。ポチはシェパード系の雑種で身体は大きく顔以外は黒い。シェパードの外見でも性格は大人しい雄犬である。
そのポチがいなくなった、それで彼女は毎日朝から晩まで必死に探していた。
保健所や保護団体、警察に聞いたり貼り紙をしたりネットでも情報を求めていた、街に出て溝等に落ちていないか公園にいないかと探した。
だが数日経っても見付からず。
薄茶色の髪の毛を左右でリボンの様に束ね顎が尖り切れ長の奇麗な目をした色白の顔を憔悴させきっていた、一六〇位のすらりとした身体も痩せてきている。
兎に角あちこち探したがそれでもだった、ポチは見付からず憔悴が増すばかりだった。夫の納茶色の髪の毛が尖った感じの癖になっている細面できりっとした目で一七三程の痩せた身体の彼もサラリーマンの仕事の合間に必死に探していた。
だがそれでもだった、十日探しても見付からず美和は家でも疲れきっていた、夫はその妻に疲れ切っているのを気遣って自分が作った夕食を出しながら言った。
「不思議だよな」
「ええ、ドッグフードが切れていたからね」
妻はポチがいなくなった時のことから夫に話した。
「コンビニに買いに行って」
「コンビニの前にポチをつないでいたらか」
「買いもの終わったら」
その時にというのだ。
「もうなのよ」
「リードを残してだよな」
「いなくなったのよ」
「誰かに攫われたのか?」
「それがわからないのよ」
「逃げる様な子じゃないしな」
夫はこのことはよくわかっていた。
「絶対に」
「そうよね」
妻もこう言った。
「あの子は」
「だとするとな」
「けれど犬を攫う人なんているかしら」
「人間の子供なら兎も角な」
「ええ、それがわからないけれど」
「けれどいなくなったからには」
「どうしてかしら、それにネットでも情報求めていたら」
妻は夫が出してくれた夕食、野菜も鶏肉も柔らかくなるまで煮たシチューを食べつつ言った。ポチのことが心配で食欲はないが。
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2024 肥前のポチ