暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
魔法絶唱しないフォギア無印編
魔法使いの帰省・颯人の場合
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に何かを言う権利はない。彼女がそれで良いと言うのであれば、それに対して異を唱えるのは無粋と言うものである。
颯人は気を取り直して我が家を見上げると、玄関扉へと近付く。そして、元の生活に戻る事への未練が残っていたのか、未だに持っていた家の鍵を鍵穴に挿して回した。
カチャリと言う鍵の開く音が、五年ぶりに住人を出迎える家の歓声の様に思えた。
「……ただいま」
誰に言うとでもなく颯人は、そう告げて玄関に上がる。鼻腔をつく匂いは、記憶の中にあるそれより少し生活感に欠けていたがそれでも子供の頃の記憶を呼び起こすには十分だった。
「──!」
颯人は精神を総動員した。蘇る記憶に、再び瞼が熱くなり涙が零れそうになる。それを奏に悟られないように堪えながら、颯人は靴を脱ぎ家に上がった。奏もそれについてくる。
玄関から上がって廊下を通り、リビングへと入った。その間に颯人が思ったのは、思っていた以上に家が汚れていないという事だった。外観はともかく、廊下などは言う程埃が積もったりしていない。五年も経てば、流石にカビや埃で家の中が汚れても良い筈なのに、である。
それが何故かは、少し考えてすぐに分かった。
「奏……お前、もしかして?」
「……何時か帰ってくるかもしれないんだから、誰かが掃除する必要があるだろ?」
奏は、颯人が魔法使いとなって海外でジェネシスと戦っている間に、何時になるか分からない颯人の帰還を信じて帰る場所を用意してくれていたのだ。
これが限界だった。五年ぶりの帰省、蘇る想い出、そして奏からの思い遣り。如何な颯人と言えど、これには感情を抑えきる事が出来なかった。
「…………はぁ、くぅ────!」
溢れ出る涙を、帽子を目深に被る事で押さえる。だがその行動自体が、彼の状態を奏に雄弁に語っていた。
奏が颯人の顔を覗き込み、してやったりな笑みを浮かべる。
「お〜お〜、流石の颯人も情には────」
奏は全てを言い切る事が出来なかった。彼を少し揶揄おうとした瞬間、颯人が奏の事を思いっきり抱き締めたのだ。
「わぷっ!? は、颯人!?」
「…………俺は幸せもんだな。ありがとうよ、奏」
「ッ!?…………気にすんなよ」
普段飄々としている彼にしては珍しい、心からの感謝に奏は彼を抱きしめ返しその背をゆっくり撫でた。
颯人はその後、奏と2人で五年ぶりに我が家の掃除をした。と言っても奏が定期的に掃除してくれていたので、掃除自体はあっさりと終わった。
綺麗になったリビングのソファーに、颯人は五年ぶりに腰掛けた。そこはまだ家族が全員居た頃、彼の父・輝彦が腰掛けていた場所だ。
嘗て父が座っていた場所に腰掛け、そこから見える景色を目に焼き付け、トランプを取り出し
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