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おぢばにおかえり
第六十二話 二人乗りその十二

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「そうしていたいです」
「そうなのね」
「それは今は出来ないですけれどね」
「どうして出来ないのよ」
「だってお家に帰らないといけないですから」
「あっ、そういうことね」
 言われてみればでした、夕方にはお家に帰らないといけないです。私は夜出歩くことは基本しないことにしています。女の子がそうしたら危ないからです。
「そうね、じゃあね」
「そうです、残念ですが」
「残念な理由がわからないけれど」
 それでもです。
「けれど嬉しいのね」
「はい、凄く」
「そうなのね」
「またこうして一緒にいていいですよね」
「またっておぢばにいたら」
 つまり去年は一年間何かあるとでした。
「よく一緒にいるじゃない」
「そうですよね」
「よく詰所にも来るのよね」
「そのつもりです」
「そうよね、だったらね」
 それならとです、私はまた阿波野君に言いました。
「阿波野君がよかったらね」
「それじゃあ」
「おぢばでもね」
「宜しくお願いします」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私と一緒にいて何が嬉しいのか」
 それがどうしてもです。
「わからないけれどね」
「まあそれはそのうちお話出来たら」
「そう言うのね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「先輩本当にこれまで男の人とは手をつないだこともないんですね」
「一度もないわよ」
 覚えている限りではです、小学校一年生の時からですし少なくとももの心ついた時からそうした記憶はありません。
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