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戦国異伝供書
第百二十一話 耳川の戦いその五

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「どうにもです」
「ないとか」
「思いまする」
 長兄である義久に畏まった口調のまま答えた。
「やはり」
「大友家を破るにしてもじゃな」
「二度と日向に来れぬまでとなりますと」
 どうしてもというのだ。
「釣り野伏せ以上はです」
「ないか」
「あれはしくじれば負けますが」
「上手くいけばな」
「敵を完膚なきまで叩けます」
「その為の戦法であるしな」
「はい、そして我等ならですな」
 歳久はその目を鋭くさせた、そのうえで義久に問うた。
「必ず」
「うむ、釣り野伏せをな」
「成功させられるとですな」
「確信しておる」
「だからですな」
「わしもこれでと言ったのだ」
 釣り野伏せを使うと、というのだ。
「その様にな」
「それでは」
「兄上、出来ればです」
 今度は家久が言ってきた。
「釣り野伏せをしやすい」
「その場にじゃな」
「大友家の軍勢を誘い込み」
 そうしてというのだ。
「そのうえで」
「散々に打ち破るべきであるな」
「釣り野伏せが必ず成功し」
「かつ敵に大きな損害を与えられるな」
「そうしたです」
 まさにというのだ。
「場所に敵を誘い込むべきです」
「ただ仕掛けるのではな」
「駄目かと」
「それもわかっておる」
「左様ですか」
「だから何処で仕掛けるかな」
 このことをというのだ。
「これから話していくか」
「そうしてですな」
「仕掛けるのじゃ」
 大友家が攻めてきた時にというのだ。
「その様にする」
「それでは」
「しかと話していこうぞ」
「それで兄上」
 義弘も言ってきた。
「ここに来て肥後の国人達がです」
「様子見に入ったな」
「どうも我等と大友家が争うのが近いと見て」
「戦の趨勢を見守るな」
「それに入った様です」
「そうであるな、肥後の者達は戦が近いと見ておるか」
「どうやら」
 こう義久に話した。
「その様です」
「やはりそうか」
「我等が勝てば」
「それで、であるな」
「肥後はです」
「一気にこちらにつくな」
「そうなるかと」
 義久に強い声で話した。
「どうやら」
「そうであるな、わしとしてはな」
「肥後は、ですな」
「来る者は拒まぬが」
 それでもというのだ。
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