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SAO─戦士達の物語
GGO編
九十七話 予選を終えて
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、タトゥーだったんだ」
「な……」

涼人はようやく、和人がこんなにも顔を蒼くしている理由を理解した。

「……確かか?」
低い声で聞いた涼人に、和人はコクリと頷く。

「他のマークならともかく、少なくともあのマークだけは……見間違えたりは、しないっ」
「だろうな……分かった」
そう言って、涼人は正面に振り返ると、ゆっくりと歩き出す。

「明日は開始から全力でそいつを探すぞ」
他の、特に関連性も無い一般人が相手であるならば、涼人もまだガセの可能性を考慮出来た。しかし残念ながら、確信が持ててしまった。
相手がラフコフのメンバーであると言うのなら……残念ながら、彼らが何らかの方法を使ってVRMMOを絡めた殺人を犯すであろうことに、確信が持ててしまったのだ。

「あ、あぁ……」
少し緊張したような声と共に、和人は涼人を追って歩き出す。

『討ち洩らしとはな……迂闊だった。まさかこっちに戻ってまでやるとはな。あのイカれポンチ共は……』
内心でほぞを噛みつつ、涼人は病院の出口へと歩く。
とにかく、明日何かが起こる事はこれで殆ど確実だ。なるべくならば、そうなる前に阻止したいが……
小さく舌打ちをして、リョウは歩くスピードを上げる。そうして、安岐さんに教えてもらった裏口から、外に出た。少し歩くと、駐車場が見えて来る。と……

「な、なぁ!兄貴……」
「んん?」
不意に、和人が声をかけてきた。
振り向くと、少し離れた場所で、真剣な……けれども何かを恐れるような顔をして立つ、従兄の姿が有る。涼人は首をかしげた。

「何だ?」
「……あの、さ……」
和人はそれを口に出すその瞬間まで、何かに従順するような表情を見せていたが……やがて、意を決したように口を開く。

「……兄貴は……」


「自分があの世界で消した人間の事……どれくらい、覚えてるんだ?」
「…………」
冷たく乾いた風が、涼人と和人の間に駆け抜けた。

「…………」
数秒の間、色々な事を恐れるような、しかし、聞いた事に後悔は無いと言った様子の和人と、完全に表情を消した涼人の顔が、一つの明るい街灯を挟んで向き合っていたが……やがて涼人が、いつも通りの調子で口を開く。

「どれくらい……か……そうだなぁ……」
それは本当に、いつも通りで、何の変哲も無い言葉。けれども……




「“50人”を超えてからは、殺した人数も数えてねぇよ」
「……っ!!!」
圧倒的な、“重み”を孕んだ言葉。

その重みに押しつぶされそうになって、しかし踏ん張るように、和人は全身に力を入れていた。その重みは、涼人にある意味では“そうさせたのかもしれない”自分達の背負うべき重さだからだ。
そうして、ふたたび冷たい風が枯れ葉を巻き込んで吹き去る。
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