選択肢
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った。
胸元に、心臓のような、溶原性細胞の塊。それは、クトリの白い肌を真っ黒に染め上げ、全身に行き渡っている。しかもそれは胎動を続けており、時間が経過するごとに首から顔にかけてどんどん浸食している。
「私の体は、アマゾン細胞でできているんだよ。生まれた時からずっと。生きているとね。人を食べたいってさえ、思っちゃう」
「……今まで、そんな素振り見せたこともないのに」
「ふふっ。流石に慣れているから」
いつもの笑顔。だが、その顔に黒い血管が入ると、後ずさりたくなる。
「あとね。もう一つ」
クトリは髪を捲りながら、背中を向ける。綺麗な彼女の背中には、点在する溶原性細胞。そして、ひと際大きな。
アマゾンネオの頭部のような紋章があった。
ハルトは、右手の甲にある、黒い紋章と見比べる。
「それって……令呪……?」
「そう」
「令呪って……腕に付くものじゃないのか」
「キュゥべえから聞いたんだけど、生後一か月には、もうマスターになっていたらしいから。だから、背中に令呪を入れたんだって」
「キュゥべえ……!」
ハルトたちを聖杯戦争に巻き込んだ白い妖精の姿が脳裏に浮かぶ。さっき病室で会ったとき、拘束しておくべきだったと後悔した。
「でも……そっか……そろそろダメかな……?」
クトリは振り返る。
「聖杯戦争は、願いをかなえるために、マスターが戦うんでしょ?」
「……違う……」
「だったら。バーサーカーのマスターである私と、ライダーのマスターの君。戦わなくちゃいけないんだよね?」
「違う!」
「違わないよ」
赤髪のクトリは、インナーを着なおす。その瞬間、彼女の体から、蒼いが発せられた。
「だから私たち、出会ってはいけなかった」
彼女の背中から、蒼い蝶の翼が伸びる。半透明なそれは、部屋の空間の半分を占めるほど大きく。
いつ握られたのか。彼女の腕には、黒く、無数の機械が複雑に絡み合ったような剣が握られていた。
「これは、アマゾンと魔法使いの戦いじゃない。これは、聖杯戦争の戦い。マスターとマスターの戦い。だから構えて。魔法使いさん」
黒い剣が、その刀身を開放させる。
「私には、願いなんてない……せめて、私のサーヴァントが幸せに生きてくれれば。それくらいかな。そのために、私は戦わなくちゃいけない」
「なんでだ……なんで……」
「私も、つい最近キュゥべえから聞いたことだから。君がマスターだったなんて思ってもみなかった」
彼女の翼が羽ばたく。
吹き荒れていく遊具たち。彼女に、もう説得は通じない。
もう、他に選択肢など見えなかった。
『ドライバーオン プリーズ』
それは一番簡単で、一番残酷な選択肢
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