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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
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が至ったところで、雅貴は吹き出した。自分がそんな気まぐれを起こしたことが可笑しかったからか、もしくは、自分にまだそんな感情が残っていることに驚いたからだろう。だから、雅貴が浮かべた笑いはどこか自分を(あざけ)るようなものだった。

 その後、15分ほどで食事を終えた雅貴は、洗い物を終えると先ほどのソファーに再び横になり、テーブルの上に置かれている高性能スマートフォンを手に取った。パスコードを入力し、待ち受け画面が表示されるのを確認してから、雅貴は電話帳を開き、“菊岡 誠二郎”の名前をタップして、耳に当てる。

 彼は前に総務省がサイバー攻撃を受けた際、雅貴のもとに事件の調査を依頼に来た官僚であり、それからというもの、ちょくちょく国としての依頼を雅貴に持って来るようになった。雅貴は最初はあまり依頼を受けようとはしなかったのだが、国なだけあって当然支払いは良かったし、国からの依頼を請け負うということはバックに国が付くということであり、その莫大なメリットを考慮した雅貴は、菊岡とはそれなりに深い関係を構築していた(あくまで“ビジネス上の”ではあったが)。
 昔から全く変わらないコール音が数回ほど鳴った後、カチャリ、という回線が繋がる音と、次いで真面目そうな青年、といった風な声が電話口から響く。

「菊岡です。あなたがこんな時間に掛けてくるなんて、珍しいこともあったもんですねぇ、橋本さん。……ひょっとして、僕の声が恋しくなったとか?」
「ハハハ、その可能性は熱力学第二法則が間違っているのと同じくらいありえませんから、安心してください」

 雅貴がおどけた風な口調で答えると、「残念ですねぇ」という短い呟きが聞こえてくるが、雅貴は気にしない。これが、この二人が話すときのスタンダードだからだ。

「さて、冗談はこのくらいにしておいて、橋本さん。用件は何ですか?」
「実は、面白そうなパーティーへの招待状が届きましてね。ちょいとばかしそちらに参加してくるので、当分の間、仕事はナシでお願いします」
「へぇ。橋本さんがそう言うなんて、これまた珍しいですねぇ。一体、どんなパーティーなんですか?」
「知り合いが神様か何かを気取ったみたいでしてね。どうやら世界を一つ創っちまったらしいんですよ。で、その世界を観覧して欲しいと頼まれまして。友情に忠実な僕としては、行かざるを得ないんですよ」
「ほほう。美しき友情ですな」

 菊岡はそう言った後、少しの間黙り込んだ。恐らく、雅貴の真意をあれこれ推測しているのだろう。雅貴もそれを分かっているため、その沈黙を破らない。そしていつも通り、その沈黙は作り出した本人によって破られた。

「……承知しました。依頼の方は、委細お任せ下さい」
「いやはや、いつもすみませんねぇ」
「いえいえ、橋本さんにお世話になって
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