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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
船団の国〜アスターテ連邦共和国〜(上)
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はあるものは皮肉を込めて【国体】などと呼ぶが要するに船の整備や代替わり、輸出入や人の出入り手配を行うアスターテ連邦政府国防省外郭組織から生まれた公社である。
 なぜ国防部門から生まれたのかといえば――元をただせば避難体制構築の一環として拡大されたものであったからだ。

「今ではこのコミューンの一員でさぁ、俺だって生まれた時は地に足がついてたけど浮足立って育ったもんさね」
 アスターテは船団国家として知られている。元々は造船とイゼルローン回廊への流通(もちろん軍需である)の拠点であった。1000万トンの積載量を誇る大型植民艦を旗艦とした輸送艦群は見る分には壮観である(実際に観光資源としても利用されている)
 だが長く暮らすにはあらゆる努力がはらわれていようと当然相応に不便であった。船団国家が生まれた契機も好き好んでそれを選んだというよりも複数の避難区域の運営や救援の都合、そして政治的象徴としての役割から政府機関を植民艦に移したのがきっかけであった。
 いうなれば連邦の象徴としての船団であり、実際には平時には植民艦から降りて持ち回りで動き回り、有事には植民艦に難民を詰め込んで避難するための船団であった。
 それが急速に実態に?み合うようになってきたのは――イゼルローン要塞である。
「今じゃ人口の6割が巡航船団に乗り込んでいる、いやはやこれでは本当に”船団の国”だな」
 4割はあれやこれやと寄港地の宇宙港と各星系政府から”貸与”された土地に暮らしている。(何しろ土地は少なからず政府でも余っており、それはそれで幾らか問題になっている)
 イゼルローン要塞が完成してから”時代は悪くなった”。それを現実として思い知らされているのが【交戦星域】であり、その象徴がアスターテとティアマトである。

 ゴツン、とジョッキを下ろした男が酒を注ぎながら唸る。
「……船団の国、は誇りある名前だったんだ、本当は」

「あの『諸元帥の大侵略』の時に避難船団を組んで動き回ったのが我々だった。ウチの曾祖父様もどでかい植民船のエンジンを整備して回ってたそうだ」
 コルネリアス1世の大親征、カイザーの先帝のもたらした経済的安寧から噴出した内政的問題から行われたそれは自由惑星同盟の社会体制をも連鎖的に変革した。
 抜本的変化をもたらしたのは【自由惑星同盟政府】の強化と【交戦星域】のみならず戦災を受けた地域の反帝国色の強化である。

「へぇ!どでかいってなぁこのコミューン旗艦みてぇな船か!」

「そうよ、アルレスハイムやらティアマトやらパランティアやらの連中を救うためによ、同盟軍の作戦で救援してたのさ」
 自分の生まれる前の栄光の時を夢見るかのようにため息をつく――実際は再現ドラマは何かと節目の際に放映されているという野暮はさておき――ため息の後に残るのは
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