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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
船団の国〜アスターテ連邦共和国〜(上)
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グの費用を渋られたからであり、その後――即ち中央と関係を断絶した時点ではどこの勢力が開拓しようとひどく困る位置であったから、としか言いようがない。
 ”アスターテ会戦”は宇宙歴796年が初であるが、パランティアの企業傭兵やヴァンフリートの軍閥、果てはティアマトのヨーマン宇宙騎兵にエル・ファシル・キャラバン警備隊の小競り合いや”事故”はアーレ・ハイネセンが訪れる前までは幾万とあったことである――そして現在では意図的に好き好まぬ限りは学ばれない歴史である。
 グエンがバーラトに植民し、『広大な空白地』を作り出したことでようやくこの地に平穏が生まれ、植民と開拓が勧められたのだ。

 そしてその立地からして元々、造船と流通業がメインであり――本土を失い、造船業が衰退しつつある今でも運輸は変わらず彼らの中心産業である。アスターテ運輸・郵政労働組合はアスターテ最大の政治団体でもありリヴォフの最大の後ろ盾でもあるのだ。

「よお!皆さん景気はどうだい」
 リヴォフは70の半ばが近づきつつある老人である。迎える彼らも似たような60代から70代が大半である。――組合の役員であることさし引いても老人が多い。

「人手が足りないですね、仕事には困らんですよ」

「軍需物資の中継はいくらでもやりますからね、今回の戦災で手ひどい目に遭いやしたが」
 巡航航路がズタボロになり運輸産業国家としては大打撃である。
「‥‥‥外に出るやつもいますし、同盟軍に入隊したやつもいますんでな」
 アスターテは――【交戦星域】全体の必要性に応じた結果であるが構成国軍としては金のかかる宇宙軍を重視している。
「船乗りが多いところは重用されるからなぁ」
 下士官になれば尉官よりも待遇はよくなる。現場の職人が不足しているのは軍も娑婆でも変わらないのが自由惑星同盟の社会的問題である。

「ウチはまぁみんな船乗りですからなぁ」
 運航できるわけじゃねぇだろ!などとゲラゲラ笑いながら酒を酌み交わす。

「親父の代から乗り込んだと聞きますがねぇ」
 へぇお前の親父っていうといつだい、と聞く。

「30年前ですよ。イゼルローン要塞ができたせいでウチは本土の宇宙港でしたが居住人数が縮小され続けてきた‥‥」

「今だと確か五千人ちょいくらいしかアスターテ本土には残っていないはずだな」
 イゼルローン要塞のせい、というのは正しい。あれのせいで千隻単位であれば哨戒網や無人衛星などの観測をかいくぐる可能性は0ではない、どころか常に警戒対象となるまでに跳ね上がった。強固な侵攻拠点があり1万隻以上の艦隊が常備兵力として駐留している、というだけでアスターテやティアマトには【喉元に装甲擲弾兵が戦斧を突きつけている】ようなものだ。

「宇宙港公社に勤めてたのかい?」
 宇宙港公社
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