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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第66話:奇跡を起こす者
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 まさかと思い背後を振り返ると、そこには案の定奏の姿があった。奏の姿と歌に安心を感じる反面、危険に首を突っ込んできた彼女に少なくない憤りを感じ声を荒げる。

「このバ奏!? 何で来たんだよ、待ってろって言っただろうが!?」
『そんな事言われて、はい分かりましたって言う事聞く女だと本気で思ってんのか?』

 確かに奏は人にやるなと言われて、それに大人しく従ってばかりの女ではない。だが今回ばかりは状況が違った。

「何の為に俺が下で待ってろって言ったと思ってんだよ。今からでも遅くねぇ、早く戻れ!」
『嫌だね。もう離れないって誓ったんだ。何より────』

 颯人の隣に並んだ奏は、彼の腕を掴みながらハッキリと告げた。

『颯人はアタシの歌があれば何時でも全開なんだろ? ならこんな大仕事だ。尚更アタシが近くに居て歌を聴かせた方が良い。違うか?』

 それは颯人が透に向けて言った言葉だ。大方透が奏の背中を押す為にバラしたのだろう。余計な事を言ってしまったと己の発言を公開した。
 だが同時に、嬉しく思う。月の欠片の軌道をズラすなどと言う大役を自分で立候補したとは言え、1人でなす事に対し全く不安が無かったと言えば嘘になる。漠然と不安を感じていたところに、愛する奏が彼の身を案じて駆けつけてくれたのだ。嬉しくない訳がない。

 何より、透に告げ奏が聞いた話は嘘ではないのだ。揶揄でも何でもなく──いや例え気分的なものだったとしても──奏の歌が彼の力の源になっている事は事実だったからだ。奏の歌があるからこそ、彼は頑張れるのだ。

 ここまで来たら奏は梃子でも動かないだろう。誰よりもそれを分かっている颯人は、やれやれと言いたげに溜め息を吐くと奏を軽く抱きしめた。

「分かった、俺の負けだよ。…………ありがとな、奏」
『礼はこれが終わってからにしてくれ』
「それもそうだな」

 2人は月の欠片と向き合った。欠片とは言えそのサイズは巨大だ。見上げるなんてレベルではない。

 しかし今の2人に不安はなかった。

「行くぞ奏! 気合入れていけよ!!」
『あぁ!!』

 颯人は月の欠片に向けて飛翔し、飛び蹴りの体勢を取った。すると胸にあったドラゴンの首が突き出した彼の右足に移動した。ドラゴンの口を中心として、彼の体は眩い輝きを放ちながら月の欠片に向かっていく。

 奏は巨大化した槍を突き出し、一直線に月の欠片に向けて突撃した。輝きを放ちながら突き進むその姿はまるで己の身を一本の槍としたかのようである。
 ここで述べておくが、奏は絶唱を唄っていない。絶唱の負担は彼女ではなく颯人の身に負担を掛ける。故に奏は、何があろうと絶唱は歌わないと心に誓っていた。

 だが今の奏の様子は絶唱を唄っているかのようであった。そし
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