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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第66話:奇跡を起こす者
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 容赦ない拳骨に思わず蹲る颯人だったが、ウィズは彼が蹲る事を許さず襟首掴んで無理矢理立たせた。

「お前何という事をしてくれたッ!? この指輪に使われている魔法石はもう手に入らない、いや手に入ってはいけないものなんだぞッ!? それをお前と言う奴はッ!?」
「ちょ、ま!? ウィズ、苦しい苦しい!?」
「掠め取ったのはあの時お前に貸した時だな? 手癖の悪さは何時まで経っても────」

 ホープウィザードリングの損失は相当大きいのか、かなりヒートアップするウィズ。流石にこれ以上はまずいと、アルドが彼を宥めた。

「ウィズ、そこまでで……」
「だがなぁ────!?」
「壊れてしまったものは仕方ありません。今考えるべきは、月の欠片の落下をどうするかです」

 アルドに宥められて、ウィズは何とか怒りを抑えたのか颯人を解放した。解放された颯人は、奏に背中を擦られながら喉を押さえている。

「あ〜、苦しかった」
「自業自得だ、馬鹿者め」
「なんか、すまんな颯人君。了子君の為に……」
「そこは気にしなさんな。俺がやりたくてやっただけだから」

 颯人はただ単に、出来る事をやっただけだ。ある意味で彼も究極のお人好しだろう。

 了子が奇跡とも言える再構成される瞬間を目の当たりにして、フィーネは憑き物が落ちたような顔になった。

「こんな奇跡が起きるだなんて、ね」
「それが俺の仕事なんでね。奇跡を見せるのが、俺の特技よ。知らなかった?」

 得意げに颯人がそう言うと、ウィズが調子に乗るなと頭を小突く。
 その様子を見てフィーネがくすくすと笑うと、体を崩壊させながら奏に頭を下げた。

「今更謝ってどうにかなるものではないけれど、それでも言わせて。ゴメンなさい、奏ちゃん。貴女の人生を狂わせてしまったわ」
「……もういいよ。全部を割り切った訳じゃないけど、過ぎた事を何時までもウジウジ言っててもしょうがない事くらい分かる。んな情けない事したら、颯人に馬鹿にされちまう」

 奏の視線の先で颯人が腕組しながら肩を竦める。仮面で顔が隠れているので表情は分からないが、奏には彼が挑発的な笑みを浮かべているのが手に取るように分かった。

 ここにも言葉を介さずに分かり合える者達が居た。その事にフィーネは、一頻り笑みを浮かべると慈愛すら感じさせる顔を奏に向けた。

「羨ましいわね。貴女達が…………。貴女の魔法使いを信じなさい。奇跡を起こして希望を作り出す天才よ、彼は」
「知ってるよ。誰よりも、ね」
「フフッ、そうだったわね」

 満足そうに笑ってフィーネはその身を完全に崩壊させた。残された砂は風に乗って運ばれていき、後には何も残らなかった。

 それを見届け、颯人は空を見上げた。彼の視線の先には、今正にこの星に
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