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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第66話:奇跡を起こす者
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と理解してしまったのだ。

 勿論これが正解であると言う保証はどこにもない。颯人の考えが間違いであり、フィーネが長年抱いていた認識が正解だったのかもしれない。
 だがフィーネの知るエンキの人物像を信じるのであれば、バラルの呪詛を用いて人類から統一言語を奪ったのには何か事情があったのだろう。それもフィーネに何も伝える暇も無かったほどの事情が。

「ま……さっきも言ったが、相手に伝える努力しなけりゃ何も伝わらねえよな。だからあんたがこんな行動に出るのも分からなくはないよ。ただあんたには次がある。次はこんな短絡的な行動に出ず、もうちっと考えて行動してくれ。次に俺らみたいに止める奴がいるとは限らないんだしさ」
「そう、だな。……ふふ、何が天才だ。こんな事にも気付く事が出来なかっただなんて」

 フィーネは涙を流しながら自嘲的に笑っていた。その様子には先程の狂気が感じられない。己の行いを顧みて、心の底から悔いているのだろう。
 今のフィーネに出来るのはそれだけだ。先程月の欠片を引き寄せるのに残されていた力を全て使い果たし、後は体が朽ちるのを待つだけだ。償いをするには時間が無さすぎる。

 徐々に崩れ行くフィーネの姿を見て、弦十郎が辛そうに顔を歪めた。

「了子君……」
「だから、私は違うって言うのに……全く、もう」

 弦十郎が苦しそうな顔をするのは、フィーネ……了子がただ仲間だったからではない。弦十郎は打ち明けてはいないが、了子を1人の女性として慕っていた。
 だがその想いを告げる事無く、了子がこの世から去ってしまう。それが弦十郎にはとても辛く、そして仲間であった二課職員達にとっても悲しい事であったのだ。

 しかしそんな悲しみを払う存在がここに居た。奇跡を起こし、人々を笑顔にする魔法使いが。

「本当に悪いと思ってるなら盗んだものを返してから逝きな」
「え?」

 颯人の言葉にフィーネが首を傾げるが、それに構わず彼は弦十郎に近付いた。その様子を奏達だけでなく、二課職員やウィズも訝しげに見ている。

「颯人君? 今のは一体──?」
「時間が無さそうだから単刀直入に訊くぞ。おっちゃん、了子さんにもう一度会いたいか?」
「何!?」
「時間が無いんだ。イエスかノーで答えてくれ」

 こうしている間にもフィーネの体は崩壊している。颯人の言う通り時間は無さそうだ。

 一刻を争うこの状況で、弦十郎は答えを口にした。

「勿論イエスだ!」

 弦十郎の答えに、颯人はニヤリと笑みを浮かべると一つの指輪を取り出した。フレイムウィザードリングとは違うが、装飾部分が赤い魔法石で出来た指輪だ。

 それを遠目から見た瞬間、ウィズが慌てて颯人に掴み掛ろうとした。

「おい待て颯人! お前それは!?」
「奏頼
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