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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第66話:奇跡を起こす者
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「月の欠片を落とす!?」
「マジか!?」
「な、なんだと!?」
「デタラメ過ぎんだろ、どんなパワーだよ!?」
フィーネの所業に誰もが驚いた。一体誰がフィーネのこんな行動を予測できるだろうか。悪足掻きにしたって常識外れ過ぎる。物理法則もへったくれもあったものではない。
「諦めきれるものか! 私の悲願を邪魔する禍根は、ここでまとめて叩いて砕く! この身はここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからな! どこかの場所、いつかの時代! 今度こそ、世界を束ねる為に!!」
「ロクデナシの為にそこまでするか?」
狂気に満ちたフィーネの笑みが、颯人の放った一言でピタリと止まる。フィーネだけではない。彼の言葉を聞いた全員が、言葉を失って彼の事を見ていた。
「…………なんだと?」
「ん? 違うのか? 直接会おうとしたのに門前払いしただけで飽き足らず、関係ない奴にまで迷惑かけるような癇癪持ちのロクデナシじゃねえか。んな奴の為にそこまでする義理あるのかねぇ?」
どこか小馬鹿にしたような物言いの颯人に、フィーネは響を押し退け憤怒の表情で颯人の首を掴んだ。
「取り消せ!? あの御方がロクデナシなどと!? あの御方の事を何も知らない貴様如きが、好き勝手言うな!?」
「じゃああんたが知るそのエンキって奴は……こんな事しないって言うのか?」
「そ…………!?!?」
颯人の反論に言い返そうとするフィーネは、そこで自身の認識の矛盾に気付いた。
フィーネが自分の言いたい事に気付いたと見て、颯人は首を掴んでいる彼女の手をゆっくり外しながら諭すように言った。
「確かに言わなきゃ何も伝わらない。だが少なくとも、あんたはそのエンキってのがどんな奴なのか知ってるんだろう。あんたが知るエンキって奴は、たった1人の不遜な行動で全人類にペナルティを課す程傍迷惑な奴なのか?」
「違う!? あの御方は、何処までも優しかった! 人である私を自分と対等に扱い、誰よりも慈悲深く、思慮深い方だった!」
「じゃあそう言う事だろ」
今、フィーネは確かに認めた。彼女が愛したエンキと言う男は、些細な事で全人類に罰を下すような男ではないと。
自分で言って、フィーネは漸く気付いた。
「まさか…………私が……勘違いしていた? あの御方は……私を、拒絶してはいなかったのか?」
「伝える暇が無かったのか、それとも言えない理由があったのか……どっちかは知らんがね。あんたの言う人物像そのままなら、その呪詛も不遜を許さなくてとかじゃなくてそうする必要があったんだろう」
「そ、そんな…………あ、あああぁぁぁぁぁ──」
フィーネは堪らずその場に崩れ落ちた。無理もない。長年……それこそ転生までして果たそうとしていた悲願が、全くの無駄である
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