生きることそのものが罪
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「千翼くん!」
まるで城塞のような病院で、友奈の千翼を呼ぶ声はすでに枯れていた。
もう何階なのかも分からない。ベンチに腰を下ろし、深く息を吐く。
「千翼くん……どこ?」
ガラガラ声になり、無意識にウォーターサーバーに手が伸びる。紙コップを取り、水を満たし、
「って、うわっ!」
溶原性細胞の存在を思い出し、紙コップを落とす。
「うわわわっ! 危ない、もう少しで飲むところだった……!」
地面に広がる水たまりを見下ろしながら、友奈は深く息を吐く。
「……ただの水にしか見えないのに、こんなものでアマゾンに……?」
蒸発するまでの時間も、普通の水と変わっているようにも思えない。
このままここで立ち止まっていても仕方がない。友奈は先を急いだ。
この階の病室を片っ端から開けていくが、中には凄惨な血の臭いしかない。だんだんその光景に慣れてくる自分に嫌気を差しながら、友奈は次の階へ移動した。
「千翼くん!」
だが、急成長を遂げた少年の姿はどこにもない。もうこのフロアにはいないのか。そんなことさえ考えた友奈だったが、その足音に動きを止めた。
「……アマゾン」
「千翼くん?」
あれだけ必死に探していた千翼が、向こうから姿を現した。
赤いスカーフを首に巻き、灰色の上着を羽織った、友奈と同じか少し年上くらいの少年。少し下を向いていたが、やがて顔を上げて、友奈を見据えている。
これまで見た中で、最も成長している状態の千翼だった。彼はひとたび友奈を認識すると、少しショックを受けたような表情を浮かべた。
「アマゾン……友奈さんが……?」
「え? アマゾンって……」
感染したの? その疑問に是と応えるように、友奈は首筋に違和感が走った。
虫が這うような感覚に、思わず両手で掻きむしる。
「……これって……」
それを見て、友奈は目を大きく見開く。
「溶原性細胞……!」
それを証明するかのように、体温がどんどん上がっていく。やがて体温は、空気中の水分を蒸気にするほどの高温に達していく。全身の筋肉が変形をはじめ、骨格を無視した筋肉が出来上がっていく。
その時。友奈は理解した。
下の階で、千翼がアマゾン態になったとき、千翼の体液を摂取してしまったのではないかと。千翼から直接取り入れてしまったせいで、こんなに早く感染してしまったのではないかと。
やがて人間の姿を忘れていく体。そして。
「うがああああああああああああ!」
全身に走る激痛。これまでの如何なる敵との戦い以上の痛みに、友奈は膝をついた。
そして。
その痛みが、外部から無理やり押さえつけられていく。変形し始めた体が、突起した
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ