生きることそのものが罪
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部分が破壊されることにより、元に戻っていく。
「牛鬼……」
無表情の妖精が、友奈の目の前で見返している。薄っすらと桃色に光っていたそれは、じっと友奈に釘付けで動かない。
「そっか……そうだよね……東郷さんも言ってた……妖精は、勇者を御役目に縛り付けるものだって……」
脳裏に、英霊になる前にいた親友の姿を思い浮かべる。
「そっか……アマゾン化さえも、許してくれないんだね……」
助かったと同時に、友奈の中にやるせなさも感じていた。
「友奈さん……?」
おそるおそる声をかけてくる千翼。
「大丈夫?」
「大丈夫……」
千翼に助け起こされ、友奈は頭を振った。
「千翼くんこそ……大丈夫?」
「何が?」
「さっきの……その……」
アマゾン態のことを何と言えばいいのか、言葉が見つからない。
千翼は少し黙り、ウォーターサーバーの紙コップを取る。
「千翼くん?」
友奈が止める間も許さず、千翼はがぶがぶと水を飲む。だが、溶原性細胞の源である水をいくら摂取しても、千翼の体に何ら異常はなかった。
「……俺……やっぱりアマゾンなんだ……」
もう何杯飲んだのだろうか。紙コップをウォーターサーバーの上に置き、千翼は泣き入りそうな顔を浮かべる。
「さっきさ……院長室に行ったんだ」
「院長室……」
「院長なら、何か知ってるんじゃないか……俺のこと、何か……そう思ったんだ」
「うん」
そのまま千翼は、友奈の肩にもたれかかる。今にも壊れそうな彼を、友奈は静かに抱き留める。
「いなかったけど、研究データを調べた」
「うん」
「そうしたら……」
千翼の体が震える。讃州中学の制服が、彼の涙で濡れていく。
「溶原性細胞は……俺の細胞から作ったって……俺が原因なんだって……」
「うん」
「俺が……俺がみんなをアマゾンにしたって……友奈さんをアマゾンにするところだったって……」
「うん」
「全部……全部……全部俺のせいだ……俺がいたから……」
「……うん」
否定したかった。千翼くんのせいじゃないと言いたかった。
だが、そんな簡単な言葉は、まるで口に柵が取り付けられたように出すことができなかった。何しろ。
「俺は……生きていちゃいけなかったの……?」
その言葉を否定することができなかったから。
千翼は友奈の肩を掴み、訴えるように言った。
「もしかして、俺って、生きてたらいけなかったの? 父さんの言ったとおり、生きていたらいけなかったの……?」
「そ、そんなこと……」
これまで、友奈の前に現れたアマゾンたちの姿がフラッシュバックする。
人生があっただろう。未来があっただろう。過
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