第100話『予選E』
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単には譲れません」
「言うねぇ。ならここは取り合いってことで……って、んだよ、もう1人来やがった」
「え?」
男の言葉を聞いて振り向くと、こちらに向かってくる1人の人物を見つけた。木陰でその姿はよく見えないが、真夏なのに長いコートを羽織った高身長の男性……といったところか。
「あんたも気配に釣られたクチかい?」
「……」
「おいおい、せめてなんか言ってくれよ」
「……」
男の問いかけに、その人物は何も答えない。無視するにしても、もう少し反応くらいしてあげればいいというのに。
男はなおも軽口を叩くが、その人物はその悉くを無視した。さすがにその態度が気に食わなかったのか、男はコートの人物の元へと近づいていく。
「聞こえてんのか? 口がついてんだから、返事くらいしてくれても──」
そう言いながら、男がその人物の肩に手を置こうとした、その瞬間だった。
──男が、目にも止まらぬ速さで吹き飛ばされた。
「は……?!」
いきなりの出来事に、緋翼は驚きながら男の行方を目で追う。
すると、木の幹にぶつかったのか、木の根元で彼がぐったりとしているのを見つけた。
「大丈夫ですか?!」
さすがに心配になって、駆け寄って声をかけるも応答はない。どうやら気絶しているようだった。
「何でこんなこと……!」
緋翼は怒りを込めた言葉を、コートの人物に向ける。
そう、彼こそが男性を吹き飛ばした張本人なのだ。その証拠に、その人物は未だに掌底を突き出したポーズをしているのだから。
ピピピピ
「……ん?」
その時、どこからか電子音が聴こえてきた。その音源を探してみると、男性の腕輪からだとわかる。そこには『失格』の2文字が刻まれていた。
「そういえば、モンスターは反撃するから失格もありえるとか言ってたわね。でも選手同士の場合は……」
そこまで言いかけて、緋翼は何かに引っかかった。
というのもこの腕輪、大会の規則で左腕に装着することが定められているのだが、コートの人物が突き出した掌底──もとい左腕にはその腕輪が見当たらない。
「……ちょっと待ちなさいよ。まさか──」
そこまで言いかけた瞬間、コートの人物が動いた。正確には、緋翼目がけて飛びかかってきたのだ。
「やばっ!?」
たまらず横に回避して難を逃れるが、跳んだ勢いでその人物のコートが剥がれた。その時、コートの中身を見て緋翼は絶句する。
「人型の、モンスター……!」
それは真っ黒な全身で、顔には牙の鋭い口だけがついた、人型のモンスターだったのだ。
そして、何となくだが悟ってしまった。
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