第100話『予選E』
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宙へと向かって吹雪が吹き荒れ、それに直撃した水晶は悉く色を変えていく。その発生源に位置するのは銀髪の美少女──結月だ。
彼女は今、"射的"の真っ最中。開始してから3分が経過したが、果たして一体何個の的を射抜いたであろうか。正直腕輪を確認している暇がないからわからない。しかし、
「もう全然的が残ってない……!」
競技の制限時間は15分だというのに、なんともう的が尽きようとしているのだ。選手が100人以上いる訳だから当然こんな展開になることは予想していたが、あまりに早すぎる。これでは競技が続行できないのではないか。
「あ、あそこに1つ見っけ!」
そんな中、結月は残された数少ない的を発見し、氷片を放つ。そしてそれは直撃した──その瞬間だった。
全ての水晶の色が消え失せた。
「えっ!?」
突然の出来事に、たまらず結月は声を上げて驚く。それは周りの選手も同じようで、全員困惑で攻撃の手が止まってしまった。
これはどういうことだろうか。さっきまでついていた色はどこへやら、水晶は再び透明色を取り戻したのである。──まるで、『リセット』されたかのように。
『いやはや、競技中に失礼致します』
「!?」
そんな時、突然上空にジョーカーが現れた。彼は頭を掻きながら、申し訳なさそうに頭を下げる。その横には、「PAUSE」と表示された画面が出現していた。
PAUSE、とは確か一時停止という意味だったろうか。わざわざ競技を止めるとは、やはり何かあったのかもしれない。
『1つだけ、ルールを説明し忘れていました。それは、"全ての的が射抜かれたらリセットする"というものです。もちろん、リセットされたからといって、それまでの点数は失われません』
「あ〜なるほど……」
彼の言うことに、結月は即座に納得した。どうやら事故と言う訳ではなく、仕組まれた現象だったようである。やはり、この人数にこの的数は不釣り合いすぎたのだ。てか、そんな大事なことは最初に言って欲しかった。
しかし、このルールが適用されるとなると、一つだけ問題がある。
『また、バンバン的を射抜いちゃってください』
そう、『最初からやり直す』という点だ。
この射的、実はかなりの魔力を消費する。結月は上空への吹雪を乱発していたため、特にそのきらいがあるのだ。的が少なくなれば多少は休めるが、それも束の間の休息。すぐにリセットされるに違いない。
せめて事前にこのルールを知っていれば、作戦を変えたんだが……。
『それでは、競技再開でございます。大変申し訳ございませんでした』
そう言い残して、ジョーカーはいなくなった。
その瞬間、再び選手たちは射的を再開する。
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